キングの「ドクター・スリープ」を読んだ感想。名作「シャイニング」の続編だが、ややインパクト不足。

キングの「ドクター・スリープ」を読んだ。

「シャイニング」の続編ということで期待する人も多いと思う。もっとも登場人物や世界が連続しているというだけで、物語的な繋がりはそれほどない。これだけ読んでもいいけど、せっかくなので「シャイニング」を読んでからのほうがいい。ネタバレもあるし。というか「シャイニング」の読者以外でこれに手を出すひとが思い浮かばない。あぁ、映画版見てからでもいいよ。ドラマ版でも。

主人公は「シャイニング」にでた少年ダニーで、無職のアル中になっていることに驚く。映画でのあの愛らしい少年の印象が強い人はなおさらショックだろう。アル中父親のDNAを受け継いだ結果であり、彼の持つ、テレパシーのような特別な能力(=シャイン)の結果でもある。その力のおかげで死者が見え、それを忘れるために酒におぼれる。

それからいろいろあって、今回の敵役はある種の人間の持つ「スチーム」を吸い取って生きている、いわゆるヴァンパイア。精神ヴァンパイアですかね。スチーム=超能力のシャイン。こいつらがバイカー集団を結成してアメリカ全土を渡り歩いているという設定で、この設定は面白い。ヴァンパイア達は普段はヒッピー集団を装い全土を放浪し、行く先々で見つけたスチームを持つ子供を誘拐し、むごたらしく殺害して(相手が苦しむほどたくさんスチームが得られる)日々の糧を得ている。ヴァンパイアなので、人間が仲間入りすることもできる。しかしそれにはやはりそれなりの能力が必要で、ヴァンパイアになるためには転生の際の負荷に耐えるだけの力が必要になる。

でお話はというと、アブラという女の子がいて、この子が主人公を遙かに凌駕するものすごい能力の持ち主で、主人公は引き寄せられるようにアブラと知り合い、当然のようにヴァンパイアに目を付けられたアブラを守るために主人公が奮闘する、と言う話。ヴァンパイアとの戦いであると同時に主人公のアル中の過去との戦いでもある。

でまあつまらなくはないんだけど、多くの人は、ヴァンパイアたちが弱すぎると感じるのではないか。というより、アブラが強すぎる。子供を誘拐して拷問する場面とかヴァンパイアどももひどいけど、在庫のスチームが残り少なくなったりしてなんだか生き残るために汲々としている描写とかがあって、絶滅危惧種を見ているみたい。なにより、アブラが強すぎる。ヴァンパイは莫大なスチームを持つアブラを狙い、アブラちゃんもピンチに陥るんだけど、どうにも潜在的な力がありすぎていまいち危機感を感じられない。主人公がいなくてもふつうにヴァンパイア全滅させられそうなポテンシャルを感じる。

でもラストの場面は好きだ。主人公はアル中時代に酷い行いをする。酔っぱらいヤク中の女のアパートに行き一夜をともにする。翌朝主人公はまだ赤ん坊といっていい位の子供がいるのに気づく。麻薬が無造作に置かれた部屋に。主人公はどうしたか。かれは女の金を盗み、部屋を出た。

この出来事がずっと主人公の重課になっていた主人公は勇気を持ってそれを断酒会で告白する。しかし、だれも主人公の話を真面目に聞いていない。つまりそれは、ありきたりな話の一つに過ぎないんだ。もっとひどい話もいくらでもあるんだろう。ずっと抱えてきた重荷をはき出せて、ダニーはさぞかしほっとしたことだろう。その後アブラとの対話、ホスピスでの場面で終わるが、悪くないと思う。

あの「シャイニング」の続編だという期待を持って読み始めると肩すかしを食らうかもしれない。キングも後書きで言い訳めいたことを書いているし、敵のあまりのふがいなさはなぜだろう、ちょっと間違っているような気がしないでもない。でも、アル中主人公には身につまされるし、ホスピスの描写も含めいい話だった。

面白いものを読みたいなら次のMr. Mercedesのほうが面白い。

スポンサーリンク