ネットフリックス「ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち」の感想。傑作CGアニメ。うさぎ版ロード・オブ・ザ・リングのような趣。

びっくりして見てしまった。ウォーターシップ・ダウンがネットフリックスとBBC共同開発でドラマ化されるとは知らなかった。

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BBCとネットフリックス共同制作のCGアニメ。CGが綺麗。

最近のCGの細かさには驚かされる。草原の草一本、うさぎの毛一本にいたるまで緻密に書き込まれた映像が美しい。

ただ、ひたすらにリアルを追求した画作りではなくて、ある程度のディフォルメを効かせているのでCGらしさというかアニメっぽさは感じられる。登場する猫や人間をみると、これがリアルを目指した映像ではないことがよく分かる。あとうさぎがのそのそ動くところなんかは、なんかちょっと妙な感じもする。

それでもディズニーやピクサーに比べるとかなり写実よりだと思う。遠景のうさぎたちの姿は本物みたいに見えて、近寄るとそれぞれのキャラクターに個性的に味付けがしてあることがわかる。

ファイバーが予知夢をみるシーンとかは映像作品、あるいはCGならではの迫力ある映像になっていてよくできているし、単純な野原のシーンでも、草原の広々とした感じ、夜の暗さ、いろいろな場面が的確に描写されていて、好き嫌いはあるかもしれないけどこの画作りは結構いいと思いました。

難点があるとすれば、けっこうリアルなのでうさぎたちの見分けがつきにくいところ。それぞれ違いはあるんだけど、いわゆるアニメ作品ほどディフォルメを効かせたり極端な特徴づけをしているわけではないので、ぱっと見でだれだかわからないこともあるかも。とくに、主役級はともかく脇役たちは同じようなうさぎなので。時々洋画を観ていて登場人物がごっちゃになるあの感じですが、それは見た目の話で行動はそれぞれ顕著に特徴づけられているし、ストーリーを見ていれば全く問題なく理解できるレベルではあります。

それから、オリジナルの声優が豪華。主役級のスター俳優が沢山出ている。わたしは日本語吹き替えで見ているのですが、もう一度英語で見ようと思わせるくらい豪華な顔ぶれです。

肝心の物語について。

原作の作者の前書きによると、ドライブ中の暇つぶしに二人の娘にせがまれて創作したお話ということだけど、うさぎが出てきて子供向けだからといってミッフィーみたいなほんわかしたものを想像してはいけない。むしろ、作者の戦争体験がこの物語のリアルな感じを生むもとになっているのだと思う。作中のうさぎたちは実在の人物をモデルにしていて、何人かは作者の従軍中の上司、同僚をもとにしている。戦争そのものはなくても、作戦行動のリアルさが感じられる。

それからうさぎを変に擬人化しておらず、ピーターラビットみたいに服を着たりせずあくまでもうさぎとして描いている。だから猫が強敵だし、車の光を見てはいけないのだし、そのあたりもリアルな物語に感じるポイントかもしれない。

で、なんとなく映画のロード・オブ・ザ・リングみたいな雰囲気を感じます。ストーリーとしてはぜんぜん違うんだけど、うさぎたちの神話から始まる壮大なところや、独自のうさぎ語が出てくるところ。「アウスラ」とか「シルフレイする」とか、うさぎ語をとくに断りなく使っているところは原作を尊重していていい。ここを変に変えてしまうとせっかくのウォーターシップ・ダウンらしさがなくなってしまう。ほかにも畏れられ敬われる伝説の黒うさぎの存在や、うさぎたちの信仰、また時に重厚な音楽とか、緑豊かな自然が舞台のほとんどである点で、見た目+αでロード・オブ・ザ・リングとの共通する何かがあるように思う。

物語は、ショベルカーで自分たちの住処を壊されたうさぎたちが、安住の地を求めて旅をするというもの。子供だましの生ぬるさはないし、ショベルカー、車といったものがもたらす破壊も容赦ない。そしてうさぎ同士の縄張り争い。

うさぎたちの生存のための冒険は危険に満ちていて、スリル満点。引き込まれます。

なお人間は様々な害悪をもたらす、ちかよってはいけない存在として描かれていますが、この話はチンケな文明批判とかではありません。人間は単なる脇役で、車やショベルカーは天災のような扱いで、完全にうさぎの視点によるうさぎ同士の物語です。きっと面白いと思います。

まとめ

凛々しく気高いうさぎたちの物語。金のため、娯楽のためではない、生きるための冒険は危険に満ちていて、幼い子どもに見せるには向かないかもしれないけどお正月でたるんだ精神を引き締めるにはちょうどいいのではないかと思います。

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