「死霊のはらわた リターンズ」ほぼ全話血しぶきまみれ、そして笑える傑作スプラッターコメディドラマ。

「死霊のはらわた」といえばサム・ライミが1981年に作った伝説的スプラッターホラー。死霊に取り憑かれた人間の恐ろしいメイクや狭い山小屋の一室で化物と過ごす今日やかなりの血みどろスプラッターぶりが話題になって、まだ公開されたいなかった日本でも海賊版ビデオが出回りマニアの間では話題になっていたらしい。

サム・ライミといえばテンポよく切れの良い演出で有名で、「スパイダーマン」はもちろん、「ダークマン」や制作を務めた「タイムコップ」でもその手腕はよく分かる。そして、デビュー作の「死霊のはらわた」からすでに、そのリズミカルな演出ぶりは変わっていないのがよくわかる。

「死霊のはらわた」は一応本格的なホラー映画だと思うけど、そのリズム感の良さはホラーというよりボケとツッコミのコメディに通ずるものがあった。第一作をあらゆる面でパワーアップさせた「死霊のはらわたⅡ」はホラーコメディになり、テンポの良すぎる演出はついつい笑えるギャグになり、前作でも過激だったスプラッター描写を更に前進させることで血糊の量もギャグと化してしまい、さらにブルース・キャンベル演じる主人公アッシュのキャラもⅡで確立し、死霊に取り憑かれた自分の右手と格闘する一人芝居をし、右手にチェーンソーを装着して死霊と戦うくどい顔の男としてスターの地位を揺るぎないものにした。

その後の「キャプテン・スーパーマーケット」という傑作とあわせて、「死霊のはらわた」シリーズはスプラッター映画の傑作として絶大な人気を誇っている。たんに評価されているだけじゃなくて、なんというか未だに熱心なファンが多い、ひとびとに愛される作品という印象。

それがドラマ化されたということで気になっていたのですが、Huluで見れたので見てみました。「死霊のはらわた リターンズ」。

一言でまとめると、これは傑作。

全部で10話の続き物で、どれも面白いけどとくに前半は笑える。

まずブルース・キャンベル演じるアッシュのキャラがついに完成された。シリーズを通じて徐々にキャラが立っていったアッシュだけど、ドラマでは完全に中年すぎのおっさん。ディスカウントストアに務めるビールっ腹の出たさえないおっさんしかも入れ歯で、トレーラーハウスに住んで安酒場に入り浸っては女の尻を追いかける毎日。しかし自身のセックスアピールについては根拠のない自身を抱いていて、よくある三枚目のキャラになっている。

ただし、長年の死霊との戦いを通じて死霊退治に関しては一応プロの腕前であり、トレーラーハウスにはかつて使ったチェーンソー、ショットガンがしまい込まれている。

また、かつて山小屋で自ら恋人を葬った経験から現在の境遇に甘んじているという設定もあって、アッシュの人物造形としてはコメディ+ちょっぴりシリアスというバランスの良い設定が出来上がっていると思いました。

そんなアッシュが女といちゃついているときについうっかり「死者の書」を読んでしまい、再び死霊が現れる、という馬鹿馬鹿しい幕開けで始まる物語。

アッシュは同僚のパブロと同じく同僚のケリーを巻き込んで死霊退治の旅を始めることになる。パブロはアッシュを英雄だと思って尊敬していて、ケリーは気色悪いおっさんだとおもっている。さらに死霊による怪死事件を追う女刑事や30年前に切断されたアッシュの右手をもつ謎の女なども登場し、行く先々で死霊との死闘を繰り広げながら、やがて舞台はすべての発端である山小屋へ…。

この山小屋、まるきりオリジナル映画版のままみたいで感慨深い。実際は違う建物なのかもしれないけど雰囲気はそのまま。

前編血まみれで馬鹿馬鹿しいノリが続くこのシリーズ、スプラッターに抵抗がない人は必見。傑作だと思います。ノリが近いのはピーター・ジャクソン監督の「ブレインデッド」でしょうか。ただし、もっと軽くてわかりやすく、より万人向けかと思われます。

なお日本語吹き替えで見ましたが吹き替えも良くできてておすすめ。アッシュもパブロもケリーも下手くそな演技じゃなくちゃんとしたプロの声優で、安心してみていられます。

シーズン1のラストはオチとしてはちょっとあっさりしている気もするけど、当然シーズン2があってそのまんま続いているのでぜひ続けてみてください。シーズン2ではアッシュのお父さんまで登場し、こちらも面白い。

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