殺人虫の紛れる濃霧と、それに閉ざされた閉鎖環境での人々の異常心理を描き、後味の悪いエンディングで評判になった映画「ミスト」。
原作はホラーとしての醍醐味を備えたスティーブン・キング原作の傑作中編だったと思います。映画は独自の味付けにかなりのインパクトがあったようで、話題になりました。個人的には原作のほうが好きですが。
そんな「ミスト」が、映画のヒットにあやかったのかネットフリックスオリジナルドラマになりました。
なんとなく食指が動かなかったのですが、この間暇つぶしに見てみました。
感想。まだ4話までしか見てないが、面白い。
追記:最後まで見ました。最後まで見ての感想はこちら。
どちらかというと映画を踏襲しているようで、映画版のドラマ化、といった感じです。
映画では、正体不明の霧に紛れる謎の化け物が恐怖の源である一方、霧に閉ざされた人々の間で巻き起こる人間同士のいさかいがより恐い要素でした。
ドラマ版ではその設定を引き継ぎ、霧とそれがもたらす物理的な暴力はもちろん、それに取り囲まれた人々が繰り広げる人間同士の争いを丹念に見せてくれそうな感じです。
主人公の娘と、知り合いの警官の息子との間のレイプ疑惑。それに激怒する主人公の妻。
主人公と警官が逃げ延びた先の教会での、神父のちょっと行き過ぎかも、と思える言動。それに輪をかけておかしい、新たな神を見つけたというおばあさん。
別の避難所のショッピングモールでは、規律を守るためにルールを作ろうとする責任者と、それに納得がいかず独自に行動する集団。
極限状況でただでさえ一触即発の人々の間に、「霧」がもたらす化け物が入り込んできて事態は悪化していきます。
謎の霧が出てきて、最寄りの建物に避難するという導入は一緒です。それに軍人が関与しているらしいというのも初回で明かされますが、最初はあくまでも周辺説明だけです。2話目以降、霧の危険性や建物への避難など、話が進展していきます。
ドラマということで舞台は広がっています。教会には主人公のお父さんと、彼の娘の親友であるゲイの少年。あと心情的に敵役となる警官が逃げ込みました。
ここではキリスト教を信じる神父と、別の神を見いだしたおばあさんの対立が生じそうです。
一方主人公の奥さんと娘さんは主人公とは離ればなれになり、ショッピングモールに逃げ込みます。映画の田舎のスーパーとは違ってかなり広い。このショッピングモール、入り口に噴水があったりしてゲームの「デッドライジング」を思わせます。
ここでは規律を求めルールを作ろうとするモール長と、それに反発する人の対立がありますが、なにせ人が多いのでもっと波乱がありそうです。主人公の娘をレイプしたのではと疑われている警官の息子も一緒。
教会にいるお父さんが、数人の仲間とともにモールに向かう、という第4話まで見ました。
潜む昆虫のような化け物が人間を襲うときのグロさとか、気味悪いところもよくでている。霧に取り囲まれている恐怖もあるし、一体全体何が原因なのか、とかこれからどうなるのか、という興味もある。
霧の存在がゾンビなんかとちがって曖昧なのが、登場人物の行動の幅を広げている。殺される人はすぐ殺されるし、大丈夫な人は少しくらい霧に撒かれていても平気という。ちょっと恣意的な感じもするけど、霧事態は人間同士のドラマを引き立てる舞台装置。ただ、事態を推し進める為の装置としてだけではなくて、装置そのものが教会のおばあさんを狂信に駆り立てる役目もあり、常に存在感があるので、そもそもなんなの?ってしらけさせるような不自然感はない。
この後はいずれだれかが馬鹿な真似をして、霧に飲み込まれていくんだろうけど、この先も期待できそうな楽しみなドラマです。映画の「ミスト」が好きな人はもちろん、「キューブ」とかが好きな人にもお勧めできると思う。