ジェーン・オースティンの「高慢と偏見」といえば、学校で習うようなイギリス文学の古典でありながら大衆小説としても親しまれていて、今日でもとても人気のある作品だ。
時代が古いがゆえの分かりづらさもあると思うけれど、今読んでも確かに面白い。恋愛小説として登場人物はキャラがはっきりしていてるし、貴族との結婚を目指す一家のドタバタをシニカルな視線で描いているので笑える。オースティンの本は他のものも人気で、たくさん映像化されている。
「高慢と偏見」の主人公は四人姉妹の次女エリザベスで、その相手役がダーシー。ダーシーはお金持ちかつ美男子の貴族で、エリザベスの一家は中流階級。初めて出会ってからお互いに多少気になりつつも、エリザベスはダーシーの高慢で気障ったらしいところがしゃくに障り、ダーシーもエリザベスを下に見るようなところがあって、つれない態度をとる。その後紆余曲折があって、ダーシーはエリザベスの頭の良さと人柄に気がついて愛を打ち明け、二人は結ばれる。ダーシーのツンデレぶり?もこの小説の人気のひみつなんだろうか。
ダーシー=美男子という定説
ダーシーは男前の貴族と言うことで、映像化でもかっこいい俳優が使われた。たとえば、イギリスでやった4時間くらいのテレビシリーズではコリン・ファースがダーシーを演じた。コリン・ファースはこの役で人気に火が付いた。この後の「ブリジット・ジョーンズの日記」での役名もダーシーだし、あれは完璧に「高慢と偏見」にインスパイアされている。
同じ文芸物で「チャタレイ夫人の恋人」もドラマ化されていて、そちらではショーン・ビーンがヒロインの相手役を演じているが、その役は貴族ではなく労働階級の使用人で、現代の基準からするとショーン・ビーンはよりワイルドな感じで、コリン・ファースのほうが貴族の美男子っぽいというイメージなんでしょう。
しかし、最近の調査よると、実際のダーシーの外観はドラマのコリン・ファースのようなものとはずいぶん違っていたらしい。小説の登場人物に「実際」も何もないが、当時のかっこいい貴族の基準を調査した結果から。
小説が書かれた当時の「美男子」とは?
コリン・ファースは体格もよくて、気の強そうな黒髪の男。それに対して、調査の結果明らかになった当時の貴族の美男子はと言うと、「顔は青白く、髪を白く染めていて、なで肩で、長い鼻にとがったあごの面長の顔」の持ち主だそうだ。しかし、フェンシングや乗馬が得意と言うことで足腰はしっかりしている。身長はコリン・ファースに比べると低くて178cmくらい。日本人からすると特に背が低いとは思えないが、コリン・ファースは187cmらしい。
オースティンが作品を書いた当時は、髪をおしろいで白く染めたあごの細くて足腰のがっしりした人が「かっこいい」とされていたようだ。
詳細は以下のサイトから。
だからどうした、という類の話なんですが、こういう歴史学的雑学にはついつい興味を持ってしまいますね。前に「ハムレットは太っていた!」という本もありましたね。
かっこいい悪いの基準は常に移り変わっていくので、まあ当たり前と言えば当たり前でしょう。平安時代の絵とか、江戸時代の浮世絵とかに描かれている女の人が今の基準で美人かと言ったら、ちょっと違うだろう。
テレビ局の話題作りのための宣伝だったようです。
それほど時代が古くないジェーン・オースティンで、現代の俳優と比べるというのがなんか妙だなと思いながら読んでいたら、これは英文学の研究ではなくイギリスのテレビ局が発表した話でした。まあそれにしてもこういう話はなかなかおもしろい。
2月からオースティンの特集をやるみたいで、その宣伝の一巻ですね。「自負と偏見」「分別と多感」「エマ」「マンスフィールド・パーク」をやるそうです。ちょっと見てみたい。
ちなみに「高慢と偏見」は人気作だけあって3作も(勝手に)続編が作られている。ひとつは「高慢と偏見とゾンビ」という原作にゾンビなどの要素を混ぜ込んだもので映画化もされた。もうひとつは真面目な続編の「ペンバリー館」というもので、当時話題になったと思うけれど評判は今ひとつのようだ。もうひとつはP.D.ジェイムズが80歳を過ぎて発表した「高慢と偏見、そして殺人」で、ちゃんとミステリーになっている模様。これは出た瞬間に買った。が、そのまま行方不明になって読んでいない。こんど探し出して読んでみよう。