「砂の城」感想。イラク戦争映画で、面白いがありきたりでインパクト足りない。

ネットフリックス配信のイラク戦争もの。

わたしの頭の中では舞台や時代からして湾岸戦争ものやブラックホークダウンみたいな他所の紛争とごっちゃになってる部分もおおいけど、イラク戦争を題材にした映画は結構多くて、「アメリカン・スナイパー」とか「ハート・ロッカー」とかなかなかおもしろい映画も作られてる。「ジャーヘッド」は湾岸戦争か。

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なかなか良く出来てるけど、印象の薄いイラク戦争もの。

「砂の城」もそういうイラク戦争ものの一つ。で、数あるなかで比較すると残念ながら目立って優れた映画とはいえない。きちんと作られているしつまらなくはないんだけど、特別目を引く部分がないというか。目立たない優等生という感じで、ちょっと惜しい。

物語は、学費のために軍に入隊した若者がいやいや行ったイラク戦争で仲間との任務、自分の責任、仲間の死、現地の荒廃なんかを経験し、やがて軍人としての使命感に目覚めるというもの。まあよくある話です。

砂漠のプレハブみたいな基地とか、下ネタ大好きなチームメイトとか、チームメイトの死とか、現地の人たちとの摩擦とか、紛争地帯をハンヴィーに乗って移動とか、どれもこれもどこかで見たような要素がたくさんもりこまれてます。もちろん武装勢力との銃撃戦もあります。

でも、仕方ないですね。それがイラク戦争だったので。脚本は実際にイラク戦争に従軍した人が書いてるそうです。自身の体験を元にしているらしい。

現地の給水所を復旧というミッションが目新しい。

この映画で見るべきところがあるとすると、それは映画で描かれる主たる任務が、偵察とか攻撃ではなく、地元の給水所の修理である、というところ。浄水所がアメリカの爆撃の巻き添えを食って破壊された。給水車で地元の人に水を配給しつつ、給水所をを直せという司令を受けるのです。

これで現地人を雇って一週間で修理しろと金を渡される部隊。しかし、イラクの人々はアメリカ軍に反感を持っている人のほうが多く、手伝ってくれる人はだれもいない。仕方なく部隊の連中だけで修理を始めるが、瓦礫の撤去すら遅々として進まずいったいいつになったら終わるのか見当もつかない。地域の指導者にもお願いに行くが、アメリカ軍に協力したら別の組織に殺される、といって協力を拒否される。しかし、地元の小学校の校長だけはアメリカ軍の意図を理解し、協力を申し出る。

この辺の給水所がらみのエピソードに入ってからが一番面白かった。給水車をハンヴィーで護衛して各地を廻って、住民に水を配るところ。給水車に一斉に群がってくる住民。給水車を追い越そうとする怪しい車。乗っている父親と少女。警戒し、軍に引き渡そうと提案する隊員。子供に爆弾をもたせる、というのはイラク戦争でもよくあった手口らしい。銃撃を受け穴だらけになる給水車。

遅々として進まない修理や、ようやく協力を得たと思ったらそれによって引き起こされる悲劇。そもそもアメリカが壊しちゃったものを直すというミッション。穴だらけの給水車からは戦争の虚しさが感じられました。

ただ、砂の城というくらいなんだから、もっとそこに焦点を当てて、げんなりするような現実を突きつけてほしかった。

結局、その後はよくある戦争映画のストーリーラインに戻ってしまい、ラストもなんだかありがちに感じた。そしてキャストも、それほど印象に残らない。

まとめ。

エンタメに徹したものでもないし、戦争の非情を冷たく描いたものでもないし、ドキュメンタリータッチでもないし、完全なフィクションでもない。脚本家の実体験をもとに、それらしい要素をなるべく盛り込んでイラク戦争映画にしました、という感じ。その結果、どこかで見たような凡庸な映画になってしまった。いろんな要素を丁寧に描きすぎてるのかな。見てつまらなくはないし、よく出来てるとは思うけど。

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