「アサシンクリード」の感想。確かに分かりづらいが、バカにするような映画じゃない。

ゲームは1と、2の三部作をやった。1は革新的だし雰囲気はとても良かったが、ゲームとしては同じことの繰り返しで単調、2はシステムがこなれて楽しめるレベルに到達していて、ストーリーも舞台も魅力的な傑作だった。ただ、長いゲームだし、舞台に馴染めなくて3以降はやってない。ギリシャのやつはやりたい。

映画の感想は、ひとことでいうと結構面白かったです。酷評されているのを聞いていたのであまり期待してなかったけど、思っていたたよりもずっといい映画だった。いろいろ変なところもあるんだけど。

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わかりづらさはあるものの、全体としては面白かった。作りも良かった。

お金かかってるし、キャストも豪華。ドゥームみたいなゴミとは一線を画すゴージャスな映画だった。ドゥームもお金はかかってたかもしれないが。

そして面白さも、ゲームの雰囲気を損なわず、基本的には同じストーリーを再現していてなかなかおもしろかった。何より個人的に好きなのがこのゲームが歴史ゲームであると同時に現代が舞台のSFでもあるという点なんだけど、映画もちゃんとその設定を踏襲していて、過去の遺物が現実を変えるという構成になっていたこと。

あと細かな部分もそうとうマニアックに原作ゲームの設定を取り入れてこだわって作っているみたいなので、そういうのを考えるとゲーム映画としてはかなりレベル高いと思う。

しかし、ゲーム未体験の人にとってはかなりわかりづらいのではないでしょうか。

過去と現在のストーリーラインが同時進行し、テンプル騎士団とアサシン教団の対立、アブスターゴ財団の目的なども絡んできて結構ややこしい話の割に上映時間は2時間弱。さらに主人公親子の和解とかアサシンの反乱とか、アムニスという謎装置の説明とかいろんな要素がありながら時間内にきっちりまとめていてすごいと思いますが、話がよく見えないまま流れていってしまう感じを持たれる方もいるかもしれません。

まあ要素を詰め込みすぎ、あるいはすべてが表面的すぎって感じもするけど…まあ、よくまとまってるんじゃないかと思う。

アクションと映像はかなり良かった。

アクションシーンは良かった。街中の追いかけっことか、アサシンブレードと呼ばれる隠し短剣、長槍、剣、弓とかの武器それぞれの使われ方とか、パルクールとか。

映像は1400年代のスペインの様子とか、鷹がぴゅーと空を飛んでる映像とか、騒乱の最中の街を俯瞰でなめていくシーンとか、アサシンがパルクールでぴょんぴょん街を逃げ回るところのカメラ周りとか、良く出来てると思いました。

CG臭いといえばそうなんだけど、もとがゲームだし、アムニスという装置を使って主人公が追体験しているいわばVR映像なわけだし、まいっか、という感じです。

建設中の建物での追い掛けっこから街全体の俯瞰につながっていくところとか、わーきれいと思いました。

あともう一つの舞台である研究所内。ここは無機質な、きれいな刑務所みたいな建物で、とりたてて言う点はないもののまあ統一感はありました。既視感も感じましたが。

アムニスっていう巨大なロボットアームみたいな機械とか、主人公が見ている映像がよくわからん仕組みで可視化されて周囲にも見えている感じとか、そのへんのCG全開の映像もまあきれいでした。

あ、ひとつ良くなかったのは早回しを多用している点。騎馬で追い掛けっこの最中とか、スピード感を出すためにちょいちょい早回しをしてるんだけど、早回しってわかっちゃうと興ざめだしリアリティが損なわれる。演出はちゃんとしてるんだから、ちょっともっさり見えるくらいは気にせずにイジらないで欲しかった。

説明がないと理解しづらいストーリーを何の説明もなしに進める潔い映画。

よくわからんのはストーリー。わからなくはないんだけど、ややこしい。

まず、大昔からテンプル騎士団とアサシン教団が対立してた。テンプル騎士団は人の心を制御できる「エデンの果実」と呼ばれる秘宝を探し求め、アサシン教団は逆にそれを隠し通そうとしていた。むやみに使われるといろいろ大変なことになるから。

で、時は現代。実はテンプル騎士団の傘下であるアブスターゴ財団は、アムニスという謎装置を使ってエデンの果実を探していた。これはDNAの記憶情報を読み取れる装置で、要するに被験者の記憶を先祖の代までさかのぼって再現できるという代物。そんなバカな、という設定なんだけど、そういうことになってるんだから仕方がない。

で、1400年代のマスターアサシンであるアギラールがどうやらエデンの果実を持ってたらしい、ってことまで突き止めてたアブスターゴ財団は、ついにアギラールの末裔を見つけ出した。それがマイケル・ファスベンダー演じる主人公のリンチ。

荒んだ生活を送っていた彼はチンピラ殺しとかで死刑になり、刑務所に収監されている。死刑執行の当日、刑が執行されて意識が遠のいた…と思いきや、気づいたらアブスターゴ財団の施設に囚われており、アムニスで先祖の記憶を追体験させられるハメになります。本人はさっぱり状況がつかめず意味不明で大変。

こいつの記憶をたどってアギラールがエデンの果実をどうしたかってのが分かれば、エデンの果実がどこにあるかわかる。ちゃくちゃくと記憶をたどる財団ですが、エデンの果実を奪われて困るのはアサシン教団。じつはリンチの他にもたくさんのアサシンたち(の子孫)が施設に幽閉されている。かれらはリンチが捕まったことに危機感を抱き、最終的に反乱を起こして施設を制圧しテンプル騎士団の集会に乗り込む。

ていうのが、主人公が追体験する先祖アギラールのストーリーと並行して語られる。

表面的な部分だけでストーリーが流れていってしまう感じはするが、わからないってほどでもない。

おおきな流れは見ていればわかるんだけど、過去パートの時代背景とかそういう補足的な説明が一切ない。しかし、それがないところが心地良い。ないほうがいいのをよくわかっている。この映画にそんなのは必要ない。

冒頭からして、先祖、主人公の子供時代、主人公の死刑執行と結構話が飛ぶ。

1400年代のスペインでの物語も、異端審問とかレコンキスタとかの時代背景の説明一切なしで進行する。そこに主人公と父の葛藤とか、アブスターゴ財団とテンプル騎士団の関係とか、研究施設を仕切っているソフィア博士の意図と財団を仕切るソフィアの父との齟齬とか、リンチのアサシンとしての目覚めとか、いろんな要素が入ってくる。

初見の人を困惑させるのに十分で、上映時間的にもちょっとダイジェスト版というか、大事な箇所だけさらっと流した感じはするものの、前述のように過不足なくまとまっているし、冒頭から生まれる疑問は見ていればちゃんと解消されるようになっている。

そして秘宝をめぐる物語が、こっちが善でこっちが悪と簡単に決められるようなものじゃないこともポイント。それをそのまま映像化している点、というか。

この構成を

俺たちの戦いはこれからだってところで終わっていて、第一部完て感じ。三部作の構想らしいが、はたして続編は出るんだろうか。いちおう、この映画だけでもまとまっているのでまあいいんじゃないでしょうか。

キャスト

キャストは豪華。

主人公リンチはマイケル・ファスベンダー。アブスターゴ財団のボスはびっくりのジェレミー・アイアンズ。その娘役はマリオン・コティヤール。テンプル騎士団の偉い人になんとシャーロット・ランプリング。

あと囚われてる若いアサシン、どこかで見たことあるなーと思ったらファンタスティックビーストでニュートのお兄さん役やってる人だった。カラム・ターナー。

そして主人公のお父さん役にブレンダン・グリーソン。

キャストをみると随分豪華な映画です。

まとめの感想。

このストーリーを、アクションシーンとかCGの演出も含めてしっかりまとめあげた監督、制作チームの手腕に関心する映画でした。

映画自体は似てないけど、作り的には「ダークタワー」に似たところもあるかな、と思った。

中世の雰囲気とかテンプル騎士団、アサシン教団の雰囲気なんかもよく出ているし、わたしは好きです。

根本的に気になる点。

気になるのは、これを言ったら身もふたもないけどDNAの記憶ってのがあまりにも納得できない点。これはありえんだろう。ゲームもそうだったし、それがないと話が始まらないから仕方ないんだけど。

あとアムニスっていう機械。ゲームだと被験中はただベットみたいなのに横たわってるだけなのが、映画だと巨大ロボットアームみたいなやつなので、被験中もリンチが自由に動き回れる。先祖の行動にあわせて、リンチも飛んだりはねたりさせられ、それによってリンチとアギラールのシンクロ度合いも増して行き、そのうちアギラールみたいな格闘術とか身のこなしも身につけてしまう。ヴィジュアル的には面白いけど、でもこの設定は変だよね。記憶をスキャンして必要なところだけ読み取ったりすればいいのに。

あと、ゲームが出た当初からずっと感じていた「アサシンクリード」という表記に対する違和感。「アサシンズ・クリード」にしてくれ。

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