原田眞人「バッドランズ」の感想。これはつらかった・・・

最初に書いてしまうと、原田眞人監督の演出は自分には合わない。くどすぎ、クセ強すぎ、大げさ、カッコつけすぎで、それにハマる人もいるとは思うんだが自分には合わない。見ていて気恥ずかしさを感じることすらある。

でもそういうテイストを気にしなければ、面白いものもある。でこのバッドランズ、オレオレ詐欺というネタが面白そうだったのと、予告編が面白そうだったので、見てみた。

結論から言うと、自分には全く合わないつまらん映画だった。まず監督特有の演出が合わない、それは最初から予想していたが、さらに映画そのものもまったくうわべだけの空虚なもので、ストーリー展開もつまらんものだった。

みている間は退屈もせず、とくに序盤の特殊詐欺関連の部分は普通にみてられたんだが。主人公(安藤サクラ)の弟(山田涼介)が出てきたあたりから風向きが変わり、弟と賭場に行ったり、主人公のかつての上司がでてきたりしはじめるとどうもストーリーが思っても見なかった方向に進んでいく。

かといって、では犯罪映画ではなく主人公と周囲の人間関係に焦点を当てた映画なのかというとそんな雰囲気でもなく、父親とのやり取りは特にあとを引くようなものでもないし、弟との関係もとくに深堀りされず、結果的に弟の存在理由、行動原理が意味不明で、たんなる都合の良いコマでしかなかった、という感想。全体的に、展開がご都合主義的すぎる。

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苦手なところ

監督が英語ペラペラだからか、特に意味もなく英語のセリフが出てくる。今回は英語で腐れ縁てなんていうの?と唐突に弟が聞き、rotten edgeであると主人公が答える。また主人公のかつての職場、かつての恋人であるキチガイが社長を務めるよくわからん会社の社員も、なぜか英語を喋る。

英語のセリフがあるとなんか海外での公開とかそういうのに有利とか、そういうのがあるんだろうか。

警察が特殊詐欺犯の拘束に成功した際の、警官同士の寸劇のようなやりとり。これも原田眞人監督によくある場面で、苦手。

演技なのかオフショットなのかわからないようなセリフに聞こえないやりとり。今回バッドランズでは、すべて演出されたセリフだったと思う。

意味ありげでとくに意味のない岡田准一の友情出演。いや、岡田准一とのやりとりがあるせいで弟の性格がぶれていて、かえって害があるような気がする。人殺しを請負いに来ておきながら殺しにビビるヘタレなのか、なんのためらいもなく人を殺せるのか、どっちなのかわからない。

主人公のかつての職場の妙なバブル期のような雰囲気。キチガイ社長と取り巻きの会食風景も変だし、部下の女性たちの服装や職場が二昔前の雰囲気で違和感ある。

特殊詐欺というわりと新し目の犯罪を扱っておきながら、元締めの銀行口座の暗証番号がわからないとか急に昭和っぽい話になる。今どきはオンラインの証券口座とかなんじゃないか?それとも犯罪で得た金だからあんまり動かせないのか?どちらにしても、通帳はあるけど口座から金を引き出すための暗証番号がわからない・・・とかのあたりで急に古臭い雰囲気に。

主人公の元恋人とかその会社については、存在自体が謎。この人たちを丸々排除して、vs警察組織でごりごりやったほうが面白かったのでは。仮想通貨とかいうワードを入れて今っぽさを取り込みたかったのかしら。

またそのキチガイと過去になにがあって、どういう経緯で主人公が西成在住の特殊詐欺犯になったのか説明がないので、感情移入できない。それとも、こういうキチガイに出会ってしまい西成に逃げてきた、というのが背景説明のつもりなのだろうか。

賭場の描写も非常にリアルではあるんだけど、そこが必要なのかと言われると、仕事前に博打でスってしまうという弟の理解できない判断力とあわせて、いらない場面だったような気もする。

伏線が雑というか唐突。

前出の暗証番号の下りの直前くらいに、そういえば主人公の誕生日っていつだっけ、みたいなやりとりがある。この他にも、そういう短絡的な展開がある。

宇崎竜童が実は元締めの元相棒で金を引き出すことができること、さらに病気を抱えていていろいろ済ませたあときれいに死んでいくというのは、あまりにも唐突で都合が良すぎる。

弟の行動もそう。どういう行動原理でそういうことするの?姉にそんな義理あったっけ?一人殺すのも二人殺すのも一緒やというやけっぱちの行動なの?

「勁草」というのが原作小説のタイトルなんだけど、この言葉を主人公が発するのが無理やりな気がする。rotten edgeもそうだけど。勁草って文語で、ふつう話し言葉では使わないよね。あの文脈でしゃべるとするなら、自分たちを「雑草」に例えるのが普通だと思うんだが。

まとめ

全体的に、ここでこういう場面をやりたい、こういう演出をしたいというのはわかるし、気の利いたやりとりなんかもできてるんだけど、その場だけで終わってしまう薄っぺらさがある。シェイクスピアとか英語の韻を踏んだやりとりを日本語にそのまま移し替えたら、ただのダジャレ、おやじギャクになってしまったような。ストーリーもご都合主義的展開が続く、軽薄に感じた。

ここはこういうネタだよ、ここはこの映画の引用だよ、ここはこんな風に演出してみたよ、というのを楽しんで見られれば、面白いんだろうけど。それはわからなくはないんだけど、どうもチャラく、うわべだけのものに感じてしまいました。

セリフについては最初から関西弁だし早口でわかりにくいかもと思っていたので、ネットフリックスで字幕付きで見たので特に問題はなかった。映画館で見てもいないのに偉そうなことをいってすみません。

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