伝説のモキュメンタリー「食人族」のリメイク、「グリーン・インフェルノ」の感想。相応にグロいが、フィクションに徹した劇映画。出来はいい。

悪名高いモンド映画、「食人族」のリメイク「グリーン・インフェルノ」。

ルジェロ・デオダート監督の1983年公開「食人族」は、2つの面で話題になりました。ひとつは、「食人」テーマということもあるそのグロ描写。ジャングルに撮影に出かけた撮影隊が、現地の人食い族に食い殺されるという内容で、殺され方もけっこう残虐。そのほかにも撮影隊が現地で亀を捕まえて食料として食べるシーンもあったり…。

もうひとつは、食われた撮影隊が現地に残したテープが見つかったので、それを公開する、という体裁のシーンがあること。映画全体はチープな演出の劇映画であることは見ればわかるんだけど、その中で、現地で発見されたとされる映像が劇中劇として上映されるわけです。公開当時は果たしてこの映像は「本物」なのか、ということが話題になりました。

個人的には、オリジナルの「食人族」は当時流行っていたモキュメンタリー、モンド映画という手法に極めて自覚的で、モンド映画的な劇映画、というものを上手に演出した点で映画史に残るものだと思います。その点が他の類似品とは一線を画するところだと思う。

原作は非常にセンセーショナルな内容で、宣伝も本物なのか?という話題性もあり、公開当時は年齢制限とかもなかったので大ヒットしたそうです。今ではTSUTAYAにおいてあると思いますが、けっこう伝説の映画的扱いですね。

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スティーブン・キング絶賛!果たして信用できるのか?

それをリメイクしたのがイーライ・ロスの「グリーン・インフェルノ」。

いつもどおり、若い男女が次々と殺されていくスプラッター映画に仕上がっています。そしてスティーブン・キング絶賛。まあ、絶賛というかツイッターかなんかで褒めてただけですが。

スティーブン・キングは言及したものはだいたい褒めているので、絶賛、といっていいのかわかりませんが、わたしのなかではキングが褒めたものはすべて「スティーブン・キング絶賛」というタグがつけられます。そして、その真贋を判断するのがキングファンの楽しみのひとつではないかと思っています。

はたして、今回のスティーブン・キング絶賛は信用できるのでしょうか。

低予算?でも全体的に丁寧かつよくできた映画。

でてるのは若手の無名俳優たち。知っている人はいません。結構大人数でアマゾンに乗り込みますが主要キャストは6人くらい。

撮影はペルー。アマゾン川が流れていて、まわりはジャングルが広がっている。空撮なんかはとてもきれい。

あと、食人族の人たちは現地の人を使っているようです。本物感が本物。モブは多分本当の現地人。女呪術師みたいな人とか、男の酋長みたいな人は俳優かな。

食人族の方々は全身のペインティングも、身につけている装飾も良くできています。

予算は500万ドル、ハリウッドの基準で考えると低予算の方だと思いますが、予算不足を感じさせないクオリティです。キャストの予算もそれほどかかっていないだろうし、効率よく使われているのでしょうか。

グロシーンはところどころ特撮の粗は見えますが、CGに頼らず味わい深い作りで生々しさがあります。グロさはかなりのものなので、耐性がない人にはおすすめしません。

 オリジナル食人族のポイント、ドキュメンタリー要素は?

さて、肝心のストーリー。食人族という映画ではストーリーなんて二の次かもしれませんが、オリジナルの「食人族」は劇映画と実録映像の境界を積極的に曖昧にし、後半のフッテージを本物なのか?と観客に思わせることに成功していたと思う。

リメイクの「グリーン・インフェルノ」では、そういうモキュメンタリー要素はなし。そこはちょっと拍子抜けしたけれど、代わりに環境保護の活動家を主人公にし、彼らの行動の偽善性、欺瞞を描くことでなんとまさかの社会派映画っぽい雰囲気に。

主人公は大学1年生の女の子で、大学の環境保護サークルに入り、アマゾンの乱暴な自然破壊を阻止するために体を張ってブルドーザーを止める、という危険な活動に参加する。

現地に到着してさっそく体を張ったデモに参加する活動家の面々。工事現場に潜入し、引きずり出されないように木に自分たちを南京錠をかけたチェーンで縛り付け、警備員に銃を突きつけられてもシュプレヒコールを叫び続ける。しかし、主人公はお父さんが国連職員ということで、知らないうちに危険な役回りをあてがわれていた。

一応、活動は成果を挙げたように見え、とりあえず負傷者もなくデモは終わった。現場の警備員に連れられ、現地を去る飛行機に乗り込む。主人公はぷんぷん。

というアマゾン入りまでのくだりを、なぜ主人公がそのサークルに飛び込んだのか、理由もきちんと説明しながらテンポよくまとめています。

実際には、このサークルの主催者である男は事前にガイド役の男を通して警備員だか工事会社と話をつけていて、この活動はたんに工事を数日遅らせるだけだ、と知っています。あくまでも売名のための活動と割り切っていますが、それを知らないたのメンバーは猛反発。

このハンサムな主催者はなにかにつけて自己中心的で、その後も自己保身ばかり考えて行動するなかなかいいキャラです。

グロシーンの出来栄え

その後、飛行機が爆発、ジャングルに墜落します。機体が破損してまず2人ほど空中に吹き飛ばされ、不時着後はさっそく食人族が襲ってきて、そのあたりの騒動でさらに4人ほど死んで、一気にメンバーが減ります。

そして生き残ったメンバーは食人族に捕まり、村に連れて行かれ食料として檻に入れられることに。ここからこの映画の肝である残酷描写が始まります。

まずさいしょの犠牲者、主人公に好意を寄せていた太っちょ。「デブのラブ」とかいってからかわれていましたが気立ての良い好青年のようでした。しかし、太っていたのが運の尽き。最初に食人族の犠牲となります。最初、何かの薬草汁みたいなのを飲まされて、てっきり介抱されているのかと思って「ありがとう」とか言ってますが、石の台みたいなのに寝かされ、両手足を押さえつけられて何か変だぞ?と気づきます。

個人的にはこの最初の犠牲者が一番グロいと思う。最初が肝心という基本を抑えています。

まず、両目をくり抜かれ、生のまま食べられる。そして舌を切り取られ、これも生のまま。そして両手足を切断され、最後には首を切られる。これが全部生きたまま行われるのです。

足を切られるとき、噴出する血の出る角度がちょっとおかしかったりしますが、全体的にすごくグロいです。

ただし、その後の場面では比較的軽めのグロシーンになります。食人族、ということで身構えていると、ちょっと肩透かしを食らうかもしれません。その分、脱出できるのかどうか、といったストーリーで盛り上げます。

食人族の食事シーンも、食人族は「敵」とか悪者ではなく、あくまでも食人という習慣を持つ人間です。なので、食事シーンは特におどろおどろしい演出はなく、丸焼きにした太っちょを切り分けて、村のみんなで仲良く食べる光景が淡々と描かれます。

こういうスタンスなので、この映画が原住民をスポイルしている、という批判は当たらないのでは、と思います。食人はフィクションだし、悪者扱いしているわけでもないので。

この後は檻からなんとか逃げ出そうとする一行の姿が描かれるのですが、ひとりリーダーだけはあと数日で工事会社の連中が来る、太っちょが犠牲になったからこれで3日はもつ、と冷静、檻に残ろうとします。

はたして一行は助かるのか。いけ好かないリーダーはどうなるのか。

キャスト

主人公はチリ出身のロレンツァイッツォ。素っ裸にされ全身白く塗られたり、割礼されそうになったり大変な目にあっていますが、この映画の後、監督のイーライ・ロスと結婚。その後もイーライ作品に出演したりしてます。

サークルのリーダーはアリエル・レビ。チリの人気スターで、モデルもやってるようです。同じイーライ・ロスの津波パニック映画「アフターショック」に出演。

最初に食べられる太っちょはアーロン・バーンズ。

ちょっとお笑い担当、立ちションシーンで局部を晒しているのはダリル・サバラ。なんと、「スパイキッズ」の少年役だったそうです。

主人公のルームメイト役に歌手のスカイ・フェレイラ。ロレンツァ・イッツォとは親友らしく、それで出演したんでしょうか。アマゾンには行かないけど、なかなかいいキャラしてます。

まとめ

長すぎず、だれることもなく、最後までまあまあ見られる映画だったと思います。ただ、人を選びます。グロい他に、ゲロ、うんち、ちんちんなども出てくる。あと、R18なんでそもそも子供はみてはいけません。男の局部が全体じゃないけど映ってるのは昔ならモザイクかかってる場面だけど、R18だとOKなんでしょうかね。

  • グリーン・インフェルノ
  • (The Green Inferno)
  • 監督: イーライ・ロス
  • 2015年
  • 上映時間 100分