「リトルデビル」の感想。オーメンのパロディ。怖くない、面白い映画。子役はむしろかわいい。

「タッカーとデイル」の監督が作ったネットフリックスオリジナル映画。

「タッカーとデイル」はよくできたスプラッターコメディなんだけど、人はたくさん死ぬし死ぬ場面はグロいので日本ではR15指定になった。「リトルデビル」はそういう場面はあんまりなく、ホラー映画をネタにしたコメディ。

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監督得意のホラーコメディ

この「リトルデビル」も「タッカーと~」の監督らしいコメディで、「タッカー~」がスラッシャー映画をネタにしていたのに対し、今度は「オーメン」とか「悪を呼ぶ少年」とかをネタにして、やはりドタバタコメディに仕上げている。

今回は「タ~」に比べると残酷な場面はほとんど無いに等しく、むしろドタバタコメディっぽさが増していて面白い。

美しい妻と結婚した主人公。妻の連れ子と仲良くなろうとするが、受け入れてもらえずに空回りしてばかり。それだけでなく、どうも息子の様子がおかしい。やがて学校でも息子の周りでトラブルが発生。なにか不吉なものを感じた主人公が調査を進めると、息子の出生の秘密が明らかになる…。

という話で、666というキーワードが出てきたり要するにオーメンなんですが、もちろんそれを元にしたパロディでもあるのでちょっとひねった展開になっています。

この映画、rotten tomatoes の評価を見ると批評家の評価は90%なのに観客の評価は42%という、不思議な結果になっています。その理由もなんとなくわかる。

途中ちょっとだれるけど、終盤で巻き返す。

まあ、パロディでよくできてるんだけど一つ一つの場面がそんなに面白くなくて、ちょっとダレ気味なんですね。悪魔の子が悪魔の子らしい不気味なことをする、主人公が調査をして子供に関して不吉なことが判明する。そのあたりの過程がちょっとありきたり。というのも当然で、ここまでは元になっているオーメンそのままの進行なんです。つまり、まだパロディとかになっていない。

「タ~」ではスラッシャー映画の殺人鬼と殺される若者たちの役割を始まってすぐに逆転させて、早い段階でパロディ映画としての面白さを引き出していた。

「リトルデビル」では、主人公がギャグ映画風演技をしているからコメディに見えているけど、実は前半はオーメンと変わらない。後半になって俄然面白くなるんだけど、そこまでがちょっと長い。つまり本領発揮するまでの出足が遅い。このへんが、観客スコアがやや低い原因かな、と思いました。

そのかわりに前半に挿入されているのは、主人公が父性を得るための四苦八苦。主人公が息子と父親としての関係を築こうとする姿は、義理の息子である、という点でいっそう強調されます。そして父になる、みたいな感じ。これが後々生きてくるので面白いんですが、この辺もホラーとは縁遠い部分なので、ホラー映画を期待して見た人にとってはちょっと肩透かしだったのかもしれない。

確かに、「タ~」はディスコミュニケーションがもたらす悲劇という社会的なネタも、ネタとして仕込んでいたし、それに比べると前半の展開が悔やまれる。とくに展開やいろいろな箇所が似てるので尚更そう感じるかも。

でも、「タ~」とは全く違うところを目指した映画で、終盤はずいぶん面白かった。家族で見られるホラーコメディ映画としてはベストに近いんじゃないかと思います、他にそんなの無いから。

映画に見られる政治的ただしさ?について。

Netflix’s ‘Little Evil’ Is The Most Surprisingly Gender Fluid Film Of The Year
Little Evil sneaks a new kind of social commentary into the horror genre.

映画評のひとつ。

ここで書かれているのは、主に主人公の親友であり同様に義理の息子との関係にてこずっているアルについて。アルは見れば分かる通り女性なんですが、女性でありながら父親役なんです。トランスジェンダーなのかなんだかわかりませんが、そういう設定。それを、さも当たり前のように描いている点がいいんだ、ということです。それから、物語最終盤での妻の行動。ここで女性と男性の行動が、紋切り型から逆転していると。

たしかに最後の指摘はそのとおりかもしれない。でも、よくそんなどうでもいいことに気づくな、と思うけど。

こうした部分は、もちろん監督がわざとそのように作っているに違いない。ということは、この映画は現代の父性に対するオープンな認識を正しく表現した映画ということになる。それはそれでいいのですが、だからといっていい映画だとは限らない。

ジェンダー的にどうかは別にして、アルは単純にキャラが立ってていい脇役だったと思います。

政治的正しさを気にかけて見るとついつい気になって仕方なくなるものです。ついついベクデル・テストに合格するか調べてみたり。あのテストの意味が未だにわからないのですが、映画が題材にした現実を判定したいのか、監督の意図を判定したいのか、どちらなんだろう。映画が一定の現実を反映しているとすると、あのテストは単に時代時代での女性性の移ろいを表すに過ぎないのでは。

ちなみにベクデル・テストとは。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%82%AF%E3%83%87%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%86%E3%82%B9%E3%83%88

キャスト

キャストは主人公のほかにアル役のブリジット・エヴァレットが目立つ。それとちょい役で「タ~」のデイル役のタイラー・ラビーンが出演。そして、カルト教団の教祖役にクランシー・ブラウン。「ショーシャンクの空に」の看守とか「スターシップ・トゥルーパーズ」の教官役が印象深い。この映画でもやっぱり存在感があります。そして子役のオーウェン・アトラス。悪魔の子だし、不気味な行動ばかりなんだけど、ちょっとぽっちゃりしていてブタ鼻でかわいい。子役時代のキルスティン・ダンストみたいな雰囲気。

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