Rats(ラッツ)というドキュメンタリー映画をみた感想。ドキュメンタリーなのに「ホラー」にカテゴライズされている最恐ネズミ映画。

名前の通り、ネズミに関するドキュメンタリー映画で、ネズミがいかにはびこっていて、いかに不潔で病原菌の巣窟になっているかを教えてくれる。監督は「スーパーサイズ・ミー」で有名なモーガン・スパーロック。

ドキュメンタリー映画だが、Netflixではホラーにカテゴライズされている。確かにネズミがもたらす災厄を考えれば、ここで描かれるネズミの繁茂は恐怖でしかないし、映される映像もグロイし、ドキュメンタリーらしからぬショック演出も頻繁に使われている。多くの人がもっているらしいネズミに対する根本的な恐怖心のおかげで、そうした演出がなくとも多くの人に相当の嫌悪感を抱かせることは間違いない。その上で制作者はあからさまにネズミ=害悪として嫌悪感を高めるような撮り方をしていることも間違いないので、この映画はホラー映画として考えた方がいいだろう。ネズミ嫌いの人は直視できないかも知れない。。

劇中でたしか駆除業者のおっさんが言っていたと思うが、人はネズミを恐がり、遠ざけてきた。そのおかげである程度ネズミがもたらす疫病から身を守ることができた。どこだったか、東南アジアだったかの言い伝えで、ネズミが寝ている人の口の上を走ると、その人は死ぬというものがあった。これは「銃・病原菌・鉄」で読んだんだったかな?とにかく私個人としてはペットでもない限りネズミというものは不潔なところで平気で暮らし、全身に病気をまとっているようなもので、絶対に近づいて欲しくない生き物である、という認識だったが、この映画でその改めるまでもない確信を再認識した。

映画では、世界中のいろいろな都市でネズミがいかにはびこっているか、そしてネズミがいかに病気や感染症の源となっているかを教えてくれる。

ネズミがはびこっている都市は、ニューヨークをはじめインド、東南アジアなど様々。そのはびこり方をみると、何もないところに突然沸いて出たのではなく、ごみ処理の不徹底や農作物の保護不足など、人々の生活に応じてネズミの現れ方も変わっているように見える。ネズミが沢山いるということは、その場所自体が不潔だということのようにも見えた。田園を食い荒らすネズミはまだ野生のもので不潔の程度は低いように思えたが、ニューヨークの下水道に巣くいゴミ捨て場を荒らすネズミの群れをみていると、ニューヨークはなんて不潔な町なんだろう、と思えてくる。インドもひどい。インドはそもそも労働者が道ばたに寝ていたりして、ネズミ退治以前に不潔な感じがした。ネズミを駆除するおっさんも、素手でネズミの首を折って殺したりしていて、衛生観念が欠如している。(むかし読んだ「カーリーの歌」という小説、カルカッタを悪く書いていると一部で文句を言われたらしいが、ごく当たり前の事実が描写されていただけなのではないか。)映画には出てこないけれど日本ももちろんネズミははびこっていて、東京の地下鉄、中央線では時々ネズミを見かけることがある。それから渋谷のハチ公前広場にはネズミがうろちょろしていると言う話だし、実際に渋谷のわりとしゃれた喫茶店で、ネズミがフロアにでてきたことがある。

ネズミのもたらす病気を調査するシーンは、ホラー映画であればスプラッタ描写や血糊に相当する、グロさ満点のシーン。ルイジアナ州のハリケーン被害後にネズミを調査した疫病調査チームを取材したシーンでは、解剖したネズミの様々な器官から様々な寄生虫や病原菌が採取され、とくにネズミの皮膚にあいた巨大な穴からでかいウマバエの幼虫が摘出される所なんかはひたすら気持ち悪い。こういうシーンも含めてホラーのくくりで間違いない映画だ。

それから人がネズミを駆除する場面もある。これは趣味の悪い撮り方をしていると感じる。ことさらにネズミ駆除を残虐なやりかたでしているとかきたてているかのように感じるからだ。まあ、確かに残酷と言えば残酷。前述のインドのネズミ駆除では素手でネズミをくびり殺し、しかもそいつがちょっとした変質者のような描き方をしている。別の場面では、ネズミ駆除にテリアをつかい、ネズミに犬をけしかけて生きたまま食い殺させている。

要するに一貫して観客に嫌悪感を催させるように作っている。それは成功していると思う。しかし、やはりそれは一方的なものの見方であって、そのために乱暴に無視されている文化がある。ひとつは、ネズミが神聖視されているインドの寺院で、ここではネズミが集団で群れている。この映画の文脈では単なる恐怖の巣窟にしか思えないが(個人的にも行きたいとはまったく思わないが)、それを生んだ文化的な背景への気づきはこの映画では生まれない。ま、そういうことははなから考慮していないのだろうけど。それからネズミ食という文化についても、ひたすらに恐怖と嫌悪感をもって描写するのみで、すこし一方的にすぎるのでは?と思った。

ところで、ネズミ講とはよくいったものでネズミは年に5回繁殖して一回に二、三十匹の子ネズミを生むそうです。そうすると劇中でやっていたような素手による捕獲、罠による捕獲、犬を使った猟なんかではとうてい駆除などできません。それでは薬で・・・とやってみても、頭のいいネズミは毒を食べないし、食べてもそのうち免疫がついて死ななくなるそうです。いわゆるスーパーラットの誕生。それで思ったのは、ネズミを本当に駆除するには、遺伝子操作しかないのでは、ということ。すでに蚊では成功している、遺伝子組み替え個体。環境的な問題のほかに、ほ乳類と言うことで倫理的な問題も必ず言われるとは思うが、本気でネズミを退治したいなら致死遺伝子を組み込んだネズミを野に放つ他はないと思う。蚊の場合は局所的な実験はすでに成功しているし、それで全世界の蚊が滅んだりするわけではないので、とりあえずネズミでも実験してみて欲しい。わたし自身はネズミ嫌いではなく、むしろ可愛いと思うんだけど、やはり害獣として目に余る行為が・・・。せめて繁殖力が犬程度だったら、平和に共存していけると思うんだけど。

  • Rats
  • 監督: モーガン・スパーロック
  • 2016年
  • 上映時間 84分
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