走るゾンビの傑作「ドーン・オブ・ザ・デッド」の感想。

ドーン・オブ・ザ・デッド。ロメロ監督のゾンビのリメイクで、もともとはのろのろ動いていたゾンビが全力で走り出した、よくも悪くも記念碑的作品。(走ったのは28日後のほうが先だけど)

これがヒットして、ゾンビ映画量産が加速した感じがします。公開当時、新宿ルミネのスクリーンで映画の冒頭部分10分くらいを上映するという宣伝方法もしたみたい。あのオープニングを新宿の人混みの中でみてたら結構面白かっただろうな。

監督はザック・スナイダーで脚本はジェームズ・ガン。ザック・スナイダーはこれが長編デビューだし、ジェームズ・ガンはトロマ映画とスクービー・ドゥーに続いての脚本なので、ふたりにとってもきっと出世作になったことでしょう。

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ゾンビ映画の大ヒット作。

この映画のヒットは、映画の出来もあるけれど、なんというか時代の流れに乗ったような部分があるんじゃないかなーという漠然とした印象を受けています。あと、28日後に続いて走るゾンビを一般化した功績が大きい。

映画自体は、オリジナル版をもとにしながらも今風のスピード感あるアクション映画に作り変えた感じ。印象はだいぶ違いますが、構成やいろんなパーツは似ています。

いろいろいいところはあるけど、オープニング、武器屋の主人アンディとのやりとり、CJのキャラ、脱出に使う改造バス、そしてラストとか。あとセクシー役の雑な死に方とかも面白かった。

嫌いな点は、ゾンビ化した妊婦の胎児もゾンビになっているところ、グロくて嫌だった。あとその妊婦の旦那が、ゾンビ化した妻を撃とうとした男を撃とうとするとかの紋切り型。あと、とくに前半で死に役みたいなキャラが多すぎるかな―というきもするし、全体的に血生臭く、汚い。でも、ゾンビ映画としてはちょうどいいのかもしれない。

オリジナル版で物語の転機になった、バイカー集団によるモール襲撃はなくなって、かわりに近所の武器屋の主人、アンディとのやり取りができた。最初のころののどかなやり取りもいいし、その後ワンちゃんを使って接触を試みるのもいい。結局失敗してアンディがゾンビにガブッとやられてしまう絶望感もよかったと思う。バイカー集団もみたかったけど、アンディとのシークエンスはよかった。

冒頭

オープニングはすごくいい出来だと思う。ごく普通の日常に突然ゾンビが現れ、あっという間に秩序が崩壊していく様子がテンポよく描かれていた。アナの勤務先の病院と、アナの近所と、アナの家庭、それぞれツボを抑えてたと思います。あと、ゾンビが走るというのがやっぱりこのオープニングの疾走感に貢献していた。そういう意味では「アイアムアヒーロー」も似ているかもしれない。ロメロは気に入らないかもしれないけど走るゾンビにはそれなりの映画的存在価値がある。ロメロも、このリメイク版のオープニングは褒めていた。その後は気に入らなかったようだけど。

あ、冒頭の曲はカントリーの王様ジョニー・キャッシュの’The Man Comes Around’。これはウィリアム・フリードキンの「ハンテッド」でも使われてましたが、内容的には「ドーン・オブ・ザ・デッド」のほうがあってるかな。「ハンテッド」にもあってたけど、ちょっと大げさな気がする。

CJ

たくさんいるキャラクターでいちばん印象に残るのはCJかな。尊大かつ自己中心的かつ偏屈な警備員。モールに逃げ込んできた生存者たちをあくまでも部外者として閉じ込め、管理しようとする。そんな彼も少しずつかれらに協力しはじめ、やがて脱出計画に賛同し、最後にはほかの生存者を逃がすために自爆する。

こう見ると最後はいいやつになる悪人パターンだけど、そこまで露骨にキャラ変しないのがいい。結構、ずっとそっけないやつのままなんだよね。だから彼が脱出計画にOKするところが映えてくるし、最後に自爆するところはグッと来る。ドラム缶爆破させる見せ場もあるし。

とはいえ、あくまでも中立な立場。もともと有能なやつだったんでしょう。モールで主人公たちと対立するのも、いけ好かない野郎なのかそれとも警備員の仕事に忠実なのか、どちらともとれるような態度。ドーン・オブ・ザ・デッドのさらにリメイクとかドラマ化とかあったら、より全面に押し出されてくるキャラでしょう。

この人、ハウス・オブ・カードに出てたんだね。ドーンだと帽子かぶってるし、同一人物と気づかなかった。

脱出決行

オリジナルの「ゾンビ」はバイカー集団にバリケードを突破されてゾンビも侵入、なし崩し的に脱出せざるを得なくなる。それまでの、地上に唯一残されたモールというユートピアでの退廃的な生活もいいし、その後の死闘も面白いんだけど、リメイク版はみな退廃に耐えられず自ら希望を求めて脱出を決意する。

ニコールというアホな娘のせいで結局ゾンビに追いやられるように脱出することになるわけですが、ちゃんと脱出計画をねっていて、バスを装甲車に仕立てるところがかっこいい。ゾンビに追われる混乱のなかでチェーンソーを持ってた手が滑ってうっかり二人も死んでしまうのはバカバカしいけど、なんとなくノリで納得してしまう。

モールを出るぞ、という決意のもとに脱出するのはやっぱりいいと思うし、なんだかんだでモールにゾンビが入ってきちゃうのもいいし、ゾンビまみれの町を突き進むのもいい。この辺の流れはオリジナルと比べるとものすごくジャンル映画的になっていて、そして展開がよく考えられていると思う。

ラスト

オリジナルの「ゾンビ」だと、生存者はヘリコプターでモールを脱出する。これもかなりの名シーン。生き残った人数は少ないし、ヘリの燃料も少ない。でも不思議と爽やかなシーン。ディレクターズ・カット版ではスタッフロールで、モールのテーマ曲にあわせてモールを徘徊するゾンビの様子が映し出されて、この部分でかなり映画の印象が変わると思う。

リメイク版は、このラストも極めてジャンル的、ホラー映画の定番パターンになっている。脱出したけど、逃げ延びた先もまたゾンビだらけでした、というオチ。スタッフロールの間も乗り込んだクルーザーに残されたハンディカムとかを映して飽きさせないんだけど、そのへんを見るとオリジナルといかに違うかがわかる。どっちかというとロメロ版よりもアルジェント版に近いのかもしれない。

このリメイク版のどうしようもないラストも好きだけどね。

まとめ

妙に生々しいグロさだったり、ラスト付近の切迫した感じだったりが特徴的なリメイク版。前にDVD買ってたのを発見した。やっぱり好きだったんだな。

 

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