「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」の感想。

去年? 一昨年? 飛行機の中でみた。

天才数学者アラン・チューリングの物語。チューリングといえばコンピューターの生みの親、人工知能の父として有名で、第二次大戦中のドイツの暗号機「エニグマ」解読の立役者としても世に知られている。

この映画は、大戦中のエニグマ解読を中心にしたチューリングの伝記で、もうひとつ、かれの同性愛についての映画でもある。どちらの面でもよくできていて、面白かった。

実際の出来事を扱った伝記映画なんだけど、事実の取捨選択がうまいのか、歴史的事実や整合性にこだわらず見せるところは見せ端折るところは端折り、必要なところは誇張し、ドラマとして飽きずに楽しめる映画になっている。

ということは、歴史的事実とはことなるところがたくさんありそうで、

政府に呼ばれて高官と面接する場面。雇われた暗号解読チームの中で、最初は孤立していたチューリングがやがてみなと親しくなるところ。同僚で女性のジョーンが職を得るきっかけがクロスワードパズルを解いたこと。ジョーンが性別のせいで疎外感を感じ、彼女を引き留めるためにチューリングがプロポーズするところ。パブでのおしゃべりがきっかけでエニグマ解読の糸口がつかめるところ。

この全部が、事実をもとに要素を整理し、複雑になりすぎないようにし、映画の台本になるように仕立ててある感じがする。みていて90%くらいはフィクションだと思うけど、映画としてはそれで正しい。

少し端折りすぎな気がするのは、チューリング以外の暗号解読チームの活躍がまったくわからないこと。最初からチューリングの暗号解読「マシン」ありきで、最終的にパブでの会話から得たひらめきでマシンを調整して、解読に成功する。主人公はチューリングで、最初から天才というとちゅう、仲間の協力がなければ先に進めない、といった台詞はあるものの、もう少し具体的に同僚が力を貸す場面があってもよかったかな、と思った。ささいなことですが。

もうひとつのテーマは同性愛。チューリングは大戦後同性愛者であることがばれ、当時は同性愛は罪だったので逮捕される。その後選択肢として2年間の刑務所入りと同性愛を矯正する(とされた)女性ホルモン注入を提示され、後者を選ぶ。その2年後、青酸カリを含んだリンゴを齧って死亡する。

映画のチューリングは明らかにホルモン療法によって衰弱し能力を失ったようで、ドイツ軍の暗号を解読したヒーローが、最後は世捨て人のように孤独のうちに死んだように描かれている。

チューリングの仕事は極秘だったため、ちょっとしたことから彼を調査した刑事がチューリングに何の公式記録もないことからソ連のスパイかもしれないと怪しみ、結果として同性愛の罪で逮捕してしまう。その刑事は天才を逮捕してしまったことへの罪悪感、大変な間違いをしでかしたのではという困惑を劇中で前面に押し出してきている。このキャラクターとこの態度は現代の視点から挿入されたに違いなく、同性愛を罪とすることの馬鹿馬鹿しさへの意見表明になっている。

そんなことで、この映画は歴史の一コマを描いた戦争映画、チューリングという著名な天才を描いた映画であると同時に、マイノリティへの差別を糾弾する映画でもある。「思いもしなかったような人物が想像もできない偉業を成し遂げる」というような台詞がたしか3回、劇中に登場する。変人の類であるチューリング、当時は場違いと思われた女性の研究者であるジェーン、同性愛者としてのチューリングに向けられていた、と思う。

2014年にチューリングに恩赦が下され、同性愛の罪は免除されたが、それはかれの功績を称えてのことなのだろうか。そうすると、偉大な活躍しなかった同性愛者はやはり罪人のままなのか。

当然のようにこういう議論がおき、当時同性愛で有罪とされた全ての人に恩赦を与えようという運動があるそうだ。

映画の音楽はあんまり印象に残らなかった。

演技は、よかったとおもう。主人公のベネディクト・カンバーバッチ、ジェーン役のキーラ・ナイトレイはよかった。刑事役の人も、何で見たのか思い出せないがちょくちょくみたことある人。もうひとり、少年時代のチューリングを演じたアレックス・ロウザーという俳優がとてもよかった。

おなじイギリスで、同じ政府の秘密組織ということで、「裏切りのサーカス」にちょびっと雰囲気が似ている。ベネディクト・カンバーバッチ、マーク・ストロングと同じ人も出ているし。でも、「イミテーション・ゲーム」のほうがぼんやりみていても映画のほうから必要な情報をキッチリ与えてくれる、より万人向けのエンターテイメントになっている。

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密
(The Imitation Game)
監督: モルテン・ティルドゥム
2014年
上映時間 114分

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