「キングダム・ウォーズ 魔界からの侵略者」の感想。真面目に作った自主制作映画みたいなファンタジー。

ネットフリックスではたくさんの映画が観られるが、観られる本数だけ多ければいいってもんじゃない。水増しのために十把一絡げでコンテンツに追加されたようなものもたくさんある。
「キングダム・ウォーズ 魔界からの侵略者」(原題はオークウォー)もそんな作品の一つ。でも、その中ではまあましな方だと思います。

ロード・オブ・ザ・リングの小道具をそっくり借りてきたようなオークたち(とロード・オブ・ザ・リングのコボルド)。謎の女霊媒師みたいなやつの声のエフェクトとか、そいつが喋るときにざわざわ聞こえる「指輪の声」的なのとかも含め、9割方ロード・オブ・ザ・リングそのもの。ただしスケールは100分の1くらいになっている。

ストレートすぎる原題のオークウォーが表すとおり、ものすごくシンプルな内容で、次元の扉をくぐって現代にやってきたオークたちと元軍人のおっさんが戦うという、それだけの内容。

オークたちがいる異世界と現代のアメリカをつなぐ通路が開いて、エルフ族のお姫様が逃げてくるところから始まるんだけど、最初はめちゃくちゃ。演技はショボいし衣装は嘘臭いし。ただ、あまりにロード・オブ・ザ・リングすぎるオークたちのメイクだけはちゃんとしていた。それはこの映画の救いで、そこがいい加減だったら見るのを止めていたと思う。

ストーリーはあってないようなもので、オークのいる異界と通じるゲート近くにある一軒家を買った元軍人がゲートの番人に選ばれ、お姫様を守るためにオークと戦うって話。

唐突に現実世界にオークが現れ、背景説明もろくにない。違和感と安っぽさからは素人の自主制作臭さがつきまとうが、そんなのお構いなしに映画は進んでいく。

なぜ主人公がオークの存在を簡単に受け入れちゃうのか、とか、警察呼ばないのかとか、かなり頻繁に異世界と通じちゃうけど今までどうしてたのか、とかいろんな疑問がわいてくる。しかし、もっともらしさを構築するのは諦めて、描きたいものに専念することにしたらしい。

オークから逃げてるくせに自分からオークに立ち向かう姫の行動。

兵力の逐次投入という愚行でたった一人の元軍人にやられていくオーク軍。

最初は馬鹿馬鹿し過ぎて大変だけど、後半映画が佳境に入ってからは一応楽しめる。この映画が描きたいものとは、主人公たちがごく少数の人数でオークの大軍と戦うアクションシーン。そこは戦闘用車両とかロケットランチャーとかが出てきて、さらにそれにドラゴンも出てきて空を飛んで火を吹くし、見せ場だけに結構がんばっている。爆発や炎や血しぶきなんかはすべてCG。ちゃちさは否めないが、監督が中学生位の時の妄想を忠実に映像化したことがうかがえる。

オークの軍団が最終決戦に持ってきたのが投石機一台というのがちょっとしょぼすぎるきもするけど、一応道具の使い方とか見せ方はちゃんと演出されていたと思う。

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大真面目なファンタジーアクション映画です

主人公は初めてお姫様にであったときコスプレか?と言うが、全体が大真面目なごっこ遊びみたいなもんである。オークとの戦闘真っ只中に不動産屋のお姉さんが主人公の家に遊びに来るシーンだけが唯一「リアル」で笑える場面で、そういう場面を取り入れているということは自覚的なコメディ映画、あるいは自意識的な狙ったC級映画に進む道もあったはずだけど、監督がやりたかったのはあくまでも大真面目なアクション映画だった。不動産屋のお姉さんも一緒になってオークと戦い、戦死してしまう。

あとはオークのボスが主人公に捕まり、地下室で尋問されるシーン。こういう、現代的な状況に斧とか槍とかを持ったオークがいるおかしさみたいなものがもうすこしあれば、また違った魅力が追加されていたかもしれない。

最後、オーク族も実は被支配者側だったことがセリフ一行で示され、敵の敵は味方理論でオークと和解したような雰囲気になる。ありがちな展開をやり過ぎるあまり映画のそもそもの土台を崩壊させているのだが、そこに目くじらを立てるほどのものではないので気にしない。

でも、主人公はこの後死体だらけで、家は焼け、車も燃えてるって状況をどう説明するんだろう。それだけが気になって仕方ない。

まとめ

馬鹿馬鹿しいながらも、ほとんどお決まりのパターンだけで構成されているような展開で演出やテンポは悪くないので、チャチさや疑問点に目をつむればそれなりに楽しめる。場面場面の演出は頑張ってると思う。駄作ではなく、健闘している映画。もっとひどい出来の映画はいくらでもあります。

ただしあくまでも自主制作から一歩踏み出した程度の作品なので、過度な期待は禁物。もう少しマシな時間の使いみちがあるのなら、そちらをおすすめします。

こういう映画を暇つぶしにみても月額料金に含まれているので、お金を無駄にしたと思わなくてすむのがネットフリックスとかの利点の一つかもしれないと、改めて思いました。

それから、この監督が偉いのはクラウドファンディングで予算を獲得していること。映画は大体出来上がっている状況で、さらにVFXを追加し、豪華なものに仕上げるためにクラウドファンディングを利用し、成功していた。そして、雇われ監督ではなく監督自らアピールして積極的に宣伝していた。ビデオスルーだし素晴らしい出来栄えの映画ではないが、自分の作りたいものを金銭的にも自力で努力して自力で制作していて、その点はいいと思った。

  • キングダム・ウォーズ 魔界からの侵略者
  • (Orc wars)
  • 監督: コール・グラス
  • 2013年
  • 上映時間 97分
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