「ノック・ノック」の感想。ひねりのない直球スリラー。女二人にぶち壊される家庭が痛ましい。

キアヌ・リーヴス主演、イーライ・ロス監督のサスペンス映画。

思わせぶりなカメラワークで何か裏がありそう…と見せかけて何もない、みたまんまのストレートな映画だった。

イーライ・ロスにしては珍しく「グリーン・インフェルノ」とか「ホステル」みたいな血みどろグロシーンはない。でもグロくはなくても、他人に家の中を無茶苦茶に荒らされるのも、結構つらいものがありますね。

芸術家の妻と暮らす建築家のキアヌ・リーヴス。妻と子どもが休暇でビーチに出かけ、自分は家に一人。そこに道に迷った若い女性二人組が家に訪れる。外は土砂降りで、キアヌ・リーヴスは呼んだタクシーを待つ間二人を家にいれてやる。で、二人に誘惑され、けっこう抵抗するものの最後には三人でヤッてしまう。

これが悪夢の始まり。当然ながら二人の女は最初から家を狙っていて、分たちは15歳、ヤッたのがバレたら刑務所行きだとキアヌ・リーヴスを脅して家を好き放題荒らしまくる。一旦は無理矢理家の外に連れ出し追い出すものの、二人組は再び家に侵入、更に過激な行動にでる。

知らない人を家に上げてはいけません、ハニートラップに注意しましょうという大切な教訓を得られるんだけど、ストーリーはほんとにただそれだけ。

中盤からは女性二人の狼藉ぶりを延々と鑑賞することになりちょっと退屈してしまうところも。考えるべき展開とか目を奪われるような要素もないので、舞台となる家の構造とか、装飾とかどうでもいいことに目が行ってしまう。

見始めたときはなにか二人の狼藉以上の何かが起きるのでは、と期待していたけど、それがないとわかってちょっと残念であるととおもに、なかなかのバカ映画でいいなとも思えました。

冒頭の、若い二人に誘惑されてタジタジになっているキアヌ・リーヴスが面白い。妻とのセックスを中断され、欲求不満だったこともあって悪いと思いながらもつい欲求に負けて3Pしてしまう。その後は殴られたり縛られたり泣きわめいたり、この映画では本当に酷い目に遭うだけのおっさん役を演じている。

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見どころ。

一番よかったのはラストかな。キアヌ・リーヴスが自分がセックスしてる動画を自分のSNSに上げられ、身動き取れない状態でなんとか「削除」ボタンにタッチしようとするもののうまく動けずに「いいね」してしまうところ。そしてさんざん荒らされた家に帰ってきた妻と子どもが帰ってきて、幼い息子が言う一言。「パパもパーティーを楽しんだみたいだね」。全体的に胸糞悪い映画ではあるものの、これはやっぱりバカ映画なのかな、と思えた瞬間でした。

女二人もキアヌを殺すと脅しておいて、最後の最後で殺さない。この二人が最初から最後まで愉快犯でした、というオチならわりと気楽な映画として楽しめたかもしれないけど、キアヌの行動、最後の選択次第では殺していたし、それに呵責を感じることもない犯罪者なので大笑い出来るような映画ではない。事故とは言え、途中に登場する黒人は殺しているようなもんだし。

あともう一つ見えるのは、現代アートみたいなものに対する皮肉なのかな。女二人の狼藉の中で、主人公の妻の芸術作品である彫刻がいたずら書きされたりめちゃくちゃに破壊されるんだけど、そのシーンには心が痛むものの、はっきり言ってあの芸術作品たちはただのガラクタにしか見えない。それに対して、最後にカメラが家の中をスクロールして映し出される女二人の破壊の痕跡。壁や写真への落書きや下着の飾り付けで、下品ではあるものの、それこそパーティー会場の飾り付けのようでもあって、ある意味バランスよくセンスがいい。家族の写真をそこらじゅうに掛けてあるいかにも幸せな家庭ですといったダサい家に、チンコの絵や「死ね」とかの頭の悪すぎる落書きを書きまくるスタイルは、奥さんのわけのわからんゴミみたいな芸術よりもずっとイケてる。

そこが、この映画のいちばんの見所かな。

女二人組はロレンツァ・イッツォとアナ・デ・イルマス。ロレンツァ・イッツォは「グリーン・インフェルノ」でも主演、監督の奥さん。眼力のある悪女。アナ・デ・イルマスはカワイコちゃん風の悪女で、なんかみたことあるなぁと思ったらこないだ見た「ブレードランナー2049」でAIのジョイを演じている人でした。

キアヌ・リーヴスは今回、ただただ翻弄されるだけの役。別のエンディングも撮影されていて、それだと最後復讐心に燃えたキアヌ・リーヴスが女のいる家を訪れノックをし、女二人が「誰?」という場面で終わっている。それもオチとしてはいいけど、ちょっとありふれているかな。

この映画はたった10館くらいでしか公開されなかったそうです。監督によれば、キアヌが(自称)15歳の女性2人と3Pするという内容に配給会社が怖気づいたのがその理由だそうで。