中島哲也監督の「下妻物語」。
セッションの元ネタ?
突然気がついたんだが、「セッション」でオーディションに遅刻しそうな主人公が急ぎすぎるあまり車に轢かれ、ヘロヘロになりながらもオーディション会場に駆けつけるシーン、あれは「下妻物語」へのオマージュなんじゃないだろうか。たまたま似たようなシチュエーションが出てきただけかもしれないけど、轢かれっぷりの良さと轢かれても意思を曲げない主人公がよく似てる。
下妻物語はあらためて褒めるまでもなく面白い映画で、たぶん読んでないけど原作も面白いんだろうけど、映画版はキャストが良かったと思う。深田恭子は、ロリータファッションが可愛くよく似合っている中にそこはかとない芋っぽさを感じさせて、田舎のロリータ感をすごくよく体現していたと思う。深田恭子が芋っぽいわけではなく、演技です。土屋アンナもヤンキー役がピッタリ。さらにモデルという土屋アンナの本職を活かしてラストは深田恭子とは別次元で似合っているロリータファッションを披露していて、役にピッタリの配役だった。
水と油に思える者同士の友情を描いた青春映画で、これがビー・バップ・ハイスクールとかクローズだと汗臭く泥臭くなるんだけどこの映画はそういう印象があまりない。実際にはけっこう体育会系のストーリーが進行してるんだけど、コメディタッチで描いていることとファッションに重点が置かれてることからパッと見では明るく朗らかなお話に見える。
お話としては、やっぱり深田恭子演じる桃子のキャラがいいと思いました。田舎で常にロリータファッションを貫き通す。勇気があり、周りから浮くことを恐れず馴れ合わない孤高の精神を持つこのキャラクターはとても魅力的です。なので、ヤンキーのイチゴが彼女に惹かれるのも当然なのです。それに対してイチゴは、裕福な家庭のお嬢様という「前歴」があまり活かされていない気がして、キャラとしてはちょいとパンチが足りないような。まあちょっと馬鹿だけど素直なところがいいところのお嬢さんという地なのかな。
で、ひたすら我が道を行く桃子は妄想の中でロココ調全盛のフランスに暮らしているわけですが、別の見方をすると他人からまともに相手にされていない可能性もあるわけです。そこに、素直に桃子を褒めるイチゴが登場することで桃子の中にあった頑なな何かが壊れ、まともな人間、つまり社会性をもった共同体の一員として生まれ変わるようになる。
一見正反対に見える二人ですが、二人が友情を育むのは当然の成り行きのように思えました。もちろん映画なので、いろんな人物が出てきて様々な出来事があって、紆余曲折を経てそういう結末に至るわけですが、いろいろな賑やかな展開を楽しみつつも桃子とイチゴの変化と友情がしっかり印象に残る、なかなかいい映画だと思いました。
まとめ
というわけで、「来る!」を見る前に同じ監督の「下妻物語」の感想を書いてみました。「告白」はまあまあ、「渇き。」には失望した。「来る!」が面白いといいんだけど。
- 2004年
- 監督:中島哲也
- 102分