クローバーフィールドシリーズ第3作「クローバーフィールド パラドックス」感想。宇宙SFのいいとこ取りをしようとしたファン向け映画。

ネットフリックスで突然公開が発表されてみんなを驚かせた映画「クローバーフィールド パラドックス」。ただの映画じゃなくて、ヒット作クローバーフィールドシリーズの続編ってことにもびっくり。どうも、最初は劇場公開用に作っていた映画が、ネットフリックスに売却されたということです。「クローバーフィールド HAKAISHA」はなかなかおもしろかったし、その関連作ということで観てみました。

ネタはよくある宇宙もののSFで、宇宙船の中で怪異が起きるというSFホラー。時代はとくに明記されてなかったと思うけど、そんなに遠くない、現代に近い世界が舞台。

地球は深刻な電力不足がひろがり、暴動が起きたり、戦争の危険も高まっていた。その危機を救うために作られたのがでっかい宇宙ステーションで、そこにある装置を稼働させることで安定した電力を地球に供給できる。

クルーは各国から集まった男女7名(確か)。装置がうまく動けば半年くらいで終わるミッションだったはずが、なかなかうまく行かずに長丁場の任務に。うまくいかないまま数年が過ぎ、このままだとステーション自体の電力も不足するってときにようやく装置が稼働。と思いきや、エネルギーがオーバーロードしたのか異常が発生、想定外の事態に…。

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いろんな宇宙ものSFの寄せ集め感。すごいB級っぽい。

この映画、狙いはよくわかる。地球の危機を救うために飛び立った宇宙飛行士たちが、居住する宇宙ステーションでいろんな怪異に遭遇する。ベースになってるのは「サンシャイン2057」で、そこに「エイリアン」要素が入ってくる。次元の裂け目から現れる超常現象は「イベント・ホライゾン」みたいで、地上に残した恋人とのビデオメッセージを通じたやりとりとか、その他の場面は「インターステラー」みたい。

いろんな要素をわりと効率的に画面に見せてくれるし、閉鎖された宇宙空間という舞台設定は割と好みなのでそれなりにテンポよく楽しめる。

しかし、全体的に浅い。取ってつけたようで、観ていてあーこれは○○ね、ここは○○みたいだねと、参考にしたであろう映画が透けて見えると言うか。演出は手堅く出来てると思うんだけど、あまりにも教科書通りというか。

なんていうか、血肉が通ってない感じがちょっとする。地球が電力不足で深刻な状況っていうのはセリフと劇中のテキストメッセージで表されるだけなんだけど、それはまあいい。でも、登場人物全員、あんまりキャラが立ってなくて生きようが死のうがさほど気にならないんです。発電のために稼働させる装置とかも説明がないのでいまいち胡散臭い。見た目はいいんだけどね。その後の怪異についての説明も、「ヒッグス粒子同士がぶつかって…」みたいなセリフもあるんだけど全体的に嘘くさい。

たぶんこの映画の一番の狙いはクローバーフィールドファンにみてもらうことなんだと思う。そのためには、細かい科学考証とか奥行きのある人物像とか、どうでもいい。「サンシャイン2057」「インターステラー」みたいな気合をいれた科学監修はないけど、この話がクローバーフィールドとどうつながるのか、みんな楽しんで考えてね、っていうスタンスなんだろうと思いました。

つまらないというより、突出した良さ、物語の核がない。

でも、クローバーフィールドだからって他をなおざりにしていい訳ではないですね。

見た目はハッタリが効いてて、それっぽい宇宙船の見た目でそれっぽい装置があって、あとは謎と意外な展開があればおもしろいはずだと思うんだけど、そこまで乗れないのはどうしてでしょうか。やっぱり宇宙船のデザインもクルーの設定も、何もかもが二番煎じな感じがするからかなぁ。体からミミズが出てきたりするのも、意外性はあるけど、なんで?って考えると答えは出ない。ただ、それがインパクトあるから。そういうのが積み重なって、全体が軽く、適当に見える。クルー同士の関係もいまいちよくわからないし、突出した部分がない。

主人公の境遇に関する、パラレルワールドものならではのトリックはわかりづらいけどなかなかよかった。

つまらないわけじゃないんだけど。総合的に見ると、劇場用に作ったけど公開せずにネットフリックスに売却されたっていうのが大体の出来を物語ってる気がする。

あとチャン・ツィイーが出てるんだけど、彼女だけ頑なに中国語で喋りつづける。しかも他のクルーはそれを理解してる。中国市場対策なんだろうけど、他のクルーが全員英語で会話してる中でこれはちょっと違和感ある。

クローバーフィールド・シリーズとしては、前作との関連がわかるのでファンは必見。

ローバーフィールドの関連作としての設定はなかなかいいと思う。そういう意味では前作のファンなら観て損はない、というかみるべきでしょう。

ラストのオチはよかった。というより、結局この映画はラストのために存在するといっても過言ではないので、やっぱりこれはクローバーフィールドファンのための映画だと思う。ただ、ファン以外からすると単なるネタ的なラストにも見える。ここはもうちょっと引き伸ばして、シリーズ通しての世界観を開陳してもよかったのではないか。この映画単体では、他のシリーズ作品にまで手を出させるほどのインパクトを欠いていると思いました。

 

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