「アイアムアヒーロー」映画版の感想。日本ゾンビ映画の最高峰。世界のゾンビ映画と比べても優秀。

ヒットしているらしい漫画「アイアムアヒーロー」の映画版の感想。

もともとゾンビ映画とか結構好きだったけど、このジャンルはクズみたいな映画も多いのであんまり手を出さないでいました。日本のゾンビ映画も意外とあるんですが、どれも低予算のちょっとギャグっぽいものばかりのようで、よくて変化球、悪ければ予算の無駄遣いなんじゃないかなぁという食わず嫌いでほとんど見ていません。

そこに「アイアムアヒーロー」の映画化。予告編見る限りはちゃんとしているようだったし、キャストも豪華で予算もそこそこあるようだったので、ひょっとしたらまともな国産ゾンビ映画が見られるかも、と思って見てきました。

ちなみに、原作は本屋さんの試し読みで1巻だけ読んで、面白いと思った。

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ゾンビ映画としても、邦画としても良くできている

で、結論から言うと、これは日本の娯楽映画としてはいい出来で、ゾンビ映画としても申し分ない出来だ。世界のゾンビ映画というジャンルの中でも、上位に入るいい出来だと思う。

好みもあるので難しいが、「28日後」レベルの映画と評価してもいいんじゃないか?ようするに、面白い。

キャストも結構豪華なのかな。

主人公の鈴木英雄は大泉洋。漫画家を目指してアシスタントをしているおっさんで、自尊心が高く、人を見下し、頭の中では理想の自分が周囲の尊敬を集める、という妄想を抱いているものの、現実では自己卑下ばかりで、常にブツブツ独り言をいって周りから気持ち悪がられている。

コミュニケーション下手でちょっとキモいところのある役なんだけど、大泉洋がこれを上手く演じていて、独り言をいってうるさがられる場面なんかはきっちり描写されているけれど、大泉洋のコミカルな雰囲気でキモさが中和されて憎めないいいキャラになっていると思う。中盤以降、ひげ面になった姿もどことなく風格が出てくる。

ヒロインは二人いて、一人は高校生のヒロミちゃん、もう一人は看護師の藪。

ヒロミちゃんを演じるのは有村架純。人気あるようで、結構かわいいとおもうけど、この映画では登場早々に感染して以降ほぼ昏睡状態。なので、演技なんかはほとんどない状態。

もう一人の藪さんは長澤まさみが演じていて、がさつで男勝りなキャラをよく演じていたと思う。終盤、長いことヒロミちゃんをおんぶしたまま行動していたけど、あれは本当におんぶしていたんだろうか。だとしたら息切れしてたのも納得できる。

主人公の彼女役は片瀬奈々。このくだりは原作とはかなり変えてあるけど、短時間できっちり状況を説明していて、いい。

その他、主人公の仕事場の面々、それから後半のショッピングモールの屋上で籠城している面々、みなさんきっちり任務をこなしていて、良かったと思う。とくに仕事場の人たち。お笑い芸人とかでも、これくらい役にはまってれば言うことはない。

日本が舞台と言うことで、土葬の場合どうなるんだとか、銃はどうなるんだとか、日本的な要素の処理をどうするのか、ということも一つの見所かなと思っていたのですが、思っていた以上に過去の優れたゾンビ映画を踏襲して、ゾンビ映画の王道に乗っ取ったストーリー展開の映画でした。

ゾンビ(この映画ではZQN(ズキュン)と呼ばれ、死者ではなく感染者で、走る)の初登場、発生初期の様子、街にゾンビが広がる様子と、ツボを押さえて伝えている。主人公が漫画家のアシスタントで昼夜逆転に近い状況で、最初のニュースを見逃してた、というのも納得できる。

展開はゾンビものの王道。

それから向かうのがアウトレットモールで、そこで籠城することになるんだけど、こわいのはゾンビだけじゃなくてそこでの間関係、というのもひとつの定番で、その生存者間の力関係の描き方が分かり易くて非常にいいし、そのダイナミックな変化もいい。

結局その拠点も崩壊する。

この展開をみるとまさに典型的なゾンビ映画。実際、典型的なゾンビ映画。ストーリーがほぼ模倣とはいえ、まともなゾンビ映画というのは数少ない。それが、日本映画で見られると言うことに正直感心した。漫画の実写化=ほぼクズといっても過言ではない現状、この映画は数少ない成功例としてもっと讃えられてもいいのではないでしょうか。

ゾンビ映画のテンプレートに乗っ取りながら、主人公の成長物語としてもキッチリ描かれている。主人公の鈴木英雄=ヒーローということで、序盤はただの情けないおっさんだった主人公が、やがて本当の英雄になる、という筋書きもきちんと表現されていたと思う。

この映画での銃の扱いもいい。日本で銃をどうやって登場させるか、という点は、主人公が銃の所持許可証を持っていて、散弾銃を持っていることになっている。サバイバルゲームをやってる人もいるし、オタクっぽい主人公が趣味で銃所持許可証を持っているのもそんなに不自然には感じなかった。そして、それを扱えるのが主人公だけなので、主人公に必然的に活躍の場が回ってくる。大泉洋が散弾銃を構えてる姿はけっこう似合っていた。

あとアクションシーンも結構迫力がありました。

街中でゾンビに襲われるシーンでは、結構大規模なロケで車の激突なんかもあったし、タクシーに乗って逃げるシークエンスなんかは、高速道路上の車内というなかなか難しい場面だったけど、かなりがんばっていたのでは。

アウトレットモールの屋上は、俯瞰で見たとにちょっと狭いなぁという感じがしなくもなかったけど、でもあのロケ地を探してこられたのは素晴らしいと思う。できることなら、でかいショッピングモールを借り切って撮影できたら最高だったのですが。

ラストの銃撃戦?も、最後の最後でようやく銃の出番であり、ふっきれた主人公の見せ場でもあり、グロさと爽快感のある良くできた構成だったのではないでしょうか。

ラストシーンはきれいに決まっていて、この映画だけで完結している。けれど、ヒロミちゃんの謎パワーの理由が説明されていなかったり、原作は続いているのでヒットしたのなら是非続編を作ってもらいたいものだ。

ゾンビが走ったり歩いたり、気になる点は多少あるものの概ね問題なし。あまり期待せず、半信半疑で見に行ったのでずいぶん甘めの感想になっているかもしれませんが、冷静に振り返ってみてもいい出来です。

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