ロシアの秘密都市に潜入したドキュメンタリー「City 40」の感想。

ソ連に、存在が隠されている秘密の町がいくつもあるっていう話は聞いてたけど、閉鎖都市とよばれるそういう町の一つに潜入して取材したドキュメンタリー映画。

主に軍事上の理由から存在が隠匿された場所とか施設は各国にいろいろあるみたいだけど、この映画で取材したのはCity40と呼ばれる町。この町にはマヤーク核施設という核物質製造施設があり、かつては存在そのものが秘密にされていた。すべてはマヤーク各施設のためで、これを稼働させるために各地から職員や優秀な学者を集めてきて、やがて家族がうまれ、そうしてできあがったのがCity40だそうだ。

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公開された秘密都市。

ペレストロイカを経てこの町の存在も公にされ、オジョルスクという名前が付き、地図でも公表されるようになった。ただし、いまでも核施設は存在していて、やはり町は閉鎖都市であり、自由に行き来することはできない。町の住人なら、身分証明書と外出許可証があれば町の外に出かけて帰ってくることができるが、外部の人間がなかに入ることは難しいそうだ。とくに旅行者や外国人は無理らしい。町に近づくと外国人立ち入り禁止などの標識がたくさんあるみたい。

この映画ではその町にどうやってか潜入して、町での暮らしぶり、閉鎖都市のロシアでの役割と位置付け、それからここで発生した核汚染についてレポートしてくれる。

秘密都市での生活は豊か。

まず、この閉鎖都市での暮らしについて。ここでの生活はとても豊かだったそうだ。これは現在よりも、昔ソ連が食糧難だったころの思い出話を聞くとよりよく分かる。子供の頃、この閉鎖都市の住民からおみやげでバナナを一房もらった思い出を語ってくれた人によると、子供の頃バナナはおとぎ話の中の食べ物だったそうだ。それからこの閉鎖都市内のスーパーの棚には食べ物が沢山並んでいて、ソーセージも沢山種類があるし、キャビアもチョコレートもあったそうで、キャビアもチョコレートも当時の一般的なソ連の子供たちにとっては夢のようなものだったんだって。ソ連の食糧不足は長いこと続いていて、その頃は黒パン一つ配給されるのにものすごい列を作って並んだり、お金があってもパン一斤も買えないとかいう話を読んだことがあったから、それと比べるとこの閉鎖都市がいかに豊かだったか、つまりいかに政府が核開発に力を注いでいたかがわかります。

この生活の豊かさは現在も続いているようで、やはり閉鎖都市は生活レベルが一般的な町よりも高いようだ。さらに治安もよく、夜間に子供を一人で外出させても安心していられるなど、犯罪も少ないとのこと。やはりお巡りさんとかが沢山いるんだろうか。そして住民も、オジョルスク市民であることに誇りを持っているらしい。

秘密都市が秘密である理由。

閉鎖都市としての性格については、冷戦時代はやはり厳しく、外出はできてもチェックがはいったみたい。ある日市外に出かけた市民は、電車で隣り合った男にしつこく町のことを聞かれ、うるさくなって自分は○○出身だとデタラメを言ったという。目的地について電車が止まると、隣の男は立ち去り際に「よくぞ秘密をばらさなかった」と言ったそうな。それから施設で働いていた男性は、子供には自分はチョコレート工場で働いていると言っていたという。いまでは核施設も町も公表されているけれど、やっぱり町の出入り口には検問があるし、自由な行き来は前述のようにできないし、何より外部の情報が入ってこないようだ。インターネットなんかはつながっているんだろうか。

この映画ではオジョルスク市という閉鎖都市と共に、そこで起きた大規模な核汚染のことも取り扱っている。マヤーク核施設で発生した、放射性廃棄物を保存していた建物が爆発し辺り一帯を汚染した大規模な事故で、ウラル核惨事と呼ばれている。チェルノブイリ事故のずっと前の1958年に起きていて、これ、初めて知ったけど相当な被害があったみたい。またそれ以前にも、そもそも放射性物質の取り扱い方がかなり雑で、施設内では床にこぼれた物を放射性物質を素手ですくったり、施設外では大量の放射性物質を近くの川にどばどば廃棄していたり、その結果沢山の人が亡くなり、未だにオジョルスク市では核汚染に苦しんでいる人がたくさんいるとのこと。30代とか10代で亡くなった人がたくさんいるというお墓のシーンは恐かった。しかし、そうしたことはあったものの住民はお国のために誇りを持ってマヤーク核施設で働き続け、この施設が国家の発展に役立っていると信じて疑わなかったようだ。実際には、こうした汚染など様々な問題も抱えてはずだが、そうした悪い話はまったく聞かされなかった。また、外部からの客観的な情報もシャットアウトされていたらしい。

ロシアであまり政府に楯突くと、大変なことになります。

このドキュメンタリーの主要な取材対象としてオジョルスク市に住む女性の人権擁護弁護士がでてくる。彼女は放射能被害に苦しむ人のため、それからオジョルスク市をより開けたものにするために活動しているそうで、国を相手取って裁判を起こしたりしてる。結局この人、この映画の撮影後にロシアの秘密警察に尋問されてスパイ容疑と陰謀の罪で告訴された。今はフランスに亡命しているということだ。やはり、ロシアで自由な政治活動というのは表向きだけもののようですね。やってもいいけど、その後無事でいられる保証はない。

まえから気になっていた存在の隠された街の内部や様子が見られて、面白いドキュメンタリーでした。そんなに長くないし。字幕は改善の余地あり。言葉使いの間違いもあるし、わかりにくい箇所もある。なおネットフリックスで見ました。

  • City 40
  • (City 40)
  • 監督:サミラ・ゲッチェル
  • 2016年
  • 上映時間 71分