映画「名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊」の感想。

ケネス・ブラナー主演の名探偵ポアロシリーズ最新作。

映像化されたポアロで一番印象的なのはデヴィッド・スーシェ主演のドラマシリーズなんだけど、それに比べるとケネス・ブラナーのポアロはちょっと重苦しいというかシリアスな部分が表に出てきている。ほかにもドラマ版と同じくいろいろな変更点があり、どっちかというとポアロの過去や登場人物の死などを含めてシリアスな雰囲気が感じられる作りになっている。

その変更点がこの3作目でもかなり強烈に出ていると思う。

というのも、これは推理小説を元にしながら完全なホラー映画に仕立てているから。

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ミステリ映画というよりホラー映画でした。

舞台はヴェネツィアで、ポアロはとあるお屋敷のパーティに招待される。そこは子供の亡霊が出るという噂がある館。さらにパーティーの後には霊媒師が呼ばれて降霊会が開かれるという。

霊なんかいるわけない、って態度のポアロだったが、会の後に何者かに命を狙われ、さらに殺人が起きてしまう。その後もそこにいないはずの少女の声が聞こえたり、不可解な出来事が起きポアロを苛む。

ていう感じで、思いっきりホラー映画の演出と編集で作り上げられた映画なんですね。

舞台も古い建物の中で、夜で、基本的に暗い。どこからどう見てもホラー映画です。

個人的にはケネス・ブラナーの3部作の中では一番毛色が違って、面白かったかな。

演出がちょっとホラー意識しすぎてて、編集なんかもちょっと無理やりっぽい感じがするところはあるものの、総じてホラーでした。降霊会の場面は霊媒師役のミシェル・ヨーの怪演で押し切り、セルフィーっぽいぶれた撮影で錯乱しそうな状態を表現したりしてるんですが、下品って感じではない。映像は、前2作のような風景美みたいなのは少なめだけど、古い建物内部の撮影はきれいで、またヴェネツィアの空撮なんかもあって観光映画としてもやや楽しめる。

もちろんミステリとしてもちゃんとしていて、連続殺人事件だし密室殺人はあるし、館の地下探検みたいな箇所もあるし、一通り盛り込んであります。

あとポアロの友人である推理小説作家という登場人物が面白い。ポアロの活躍をモデルに小説を書いてヒットを飛ばしていたが徐々に低迷、もう一発当てようという魂胆でポアロに接近する。あんたなんか、私の小説のお陰で有名になったんでしょ!っていうスタンスの食えない人なんだが、なんだかんだ腐れ縁の友人関係。

ミシェル・ヨー演じる霊媒師もなかなかいい。久しぶりにミシェル・ヨー見た(「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」はまだ見てない)。この霊媒師も過去を引きずっている。出番は思ったより少なめだった。

新たなポアロシリーズに期待すること。

この3作目、原作は「ハロウィーン・パーティ」というタイトルで、設定などにだいぶ変更がある。そもそも原作では舞台はイギリスだし、霊媒師とか降霊会とかはでてこない。映画版は思いっきりハロウィーンのホラー映画仕様に改変されてる。

また、映画の冒頭ではポアロはすでに引退してヴェネツィアで余生を過ごしている、という設定になっている。それが今回の事件に巻き込まれ、再び探偵魂に火がついた?という感じで現役復帰することになる。ということで、おそらくケネス・ブラナーのポアロももう少しは出るんだろうと思う。

そもそもオリエント急行のときにシリーズ展開するとは思ってもいなかったんだが、制作側のインタビューだか何かを読んだときにポアロを軸にアガサ・クリスティのユニバースも構築できるかも…みたいな壮大な計画もあったりするみたいだったので、よくわからんがこの先も続いていくのではないだろうか。

そうなると、原作やドラマ版と比較して見るのが楽しくなりそう。「オリエント急行殺人事件」は、有名なトリックを知っているとちょっと退屈してしまうところもあった。犯人を変えたりトリックを変えたりってのはなしで、それ以外でいかに新しさを見出すかってのが課題になると思う。

まとめ

個人的に好きなのは「ひらいたトランプ」「カーテン」。あとは、良く覚えていない。

「ベネチアの亡霊」はトリックがどうとか伏線がどうとか犯人探しをする楽しみよりも、お化け屋敷の雰囲気を楽しむ映画だと思いました。

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