キングの「ダークタワー」角川文庫で新装版発売!

今日、本屋にいって初めて知った。スティーブン・キングの長編ダークファンタジー「ダークタワー」が、なんと角川文庫から新しく出版されていました。最初の邦訳も角川でしたが、その時は第4部までで終わっていました。このたびダーク・タワー映画版が夏に公開されるのにあわせてどちらもプロモートしようということでしょうか。さすが角川と言わざるを得ません。

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今のところ第2部まで、計三冊しか出ていないようですが、たぶん映画の公開にあわせて最終刊が出る段取りになっているのでしょう。スティーブン・キングのライフワークでもあるダーク・タワーシリーズ、全てのキング作品はダーク・タワーに通じているといっても過言ではないこの作品、この機会に是非読んでみてはいかがでしょうか。他のキング作品を読んだ人はもちろん、これから読み始めて他の作品に手を出しても、作品同士の横のつながりみたいなのが感じられて楽しみの幅が広がります。

しかし、全部で7部構成、文庫版ではそれぞれ上下巻上中下巻に分かれて全18冊にもなるこのシリーズ、はまればあっという間に読めても合わないとせっかく読み始めたのが無駄になってしまう可能性があります。そこで、これから読み始める人にちょっとしたアドバイス。

まず、Ⅰを飛ばしてⅡから読み始めてもOKです。というのも、ぶっちゃけた話Ⅰはつまらないからです。

Ⅰは、物語の全容を知ってから読むと味わい深いものがありますが、一言で言うと吸収すべきバックグラウンドに比して盛り上がりを欠いているのではないか。Ⅰそのものが、物語全体の序章といっていい位置づけになっていると思います。そしてⅠでは主人公ローランドさえも自分が何者かよく分かっておらず、彼に共感できる要素がほとんどないため、これを読んでも序章として全体の雰囲気やあらましはわかっても一編の小説として「面白い」という感想は浮かばないのではないかと危惧します。

また、特にⅠは文体も妙に凝った文章で書いているようで(たしかキング自身が後書きでそう書いていた)、風間賢二訳の前にでた池央耿訳ではその雰囲気がよく伝わります。悪く言うと、よみにくい。

ですので、Ⅰを少し読んでみて別に苦にならない人は是非読んで頂きたいと思いますが、読み始めてなじめないと思った人は、Ⅰを飛ばして先にⅡを読んでみてください。

お話的にもⅡのほうが断然エンターテイメントしているし、面白い。冒頭で主人公ローランドが右手の人差し指と中指を食いちぎられてしまう。ついでに右足の親指も食いちぎられ、毒が回ってへろへろの状態。おいおい、拳銃の達人なのにどうするの?という悲惨な、手に汗握るというよりは絶望的な状況で幕を開ける訳ですが、その後不思議な状況でローランドと他の主人公であるエディが出会うと、俄然面白くなるはず。

なお、Ⅱから読み始めても構わないもう一つの理由は、各部の冒頭に「これまでのあらすじ」がついている親切設計だからです。

さて、ここから先は新しい角川版の印象を書いてみます。

表紙は山田章博の絵で統一されるようだ。新潮文庫版が、原書の豪華版のイラストを全部取り入れた太っ腹バージョンだったのでそのイラストがなくなるのは寂しい気もするが、あれも割とイメージ先行型イラストが多くて本文と矛盾している描写がたくさんあったから、まあその辺は好きずきということですね。

本屋さんでぱらぱら読んでみた感じとして、翻訳が少し変っているところがあるような気がした。新潮文庫版に比べてよりこなれて読みやすくなっていたように感じました。詳細に比べていないので断言はできないが。

大幅に加筆・修正ということなので、ひょっとするとまだ未訳の中編、”The wind through the keyhole”も一緒に翻訳されるのかもしれない。これは2011年に出版された中編で、本編の途中に位置するもの。ローランドが仲間に語る自分の昔話、といった内容で、評判もいいらしい。

とりあえず、以前のように途中で頓挫しないように、無事に最終巻までこぎ着けて欲しい物です。

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