今から多肉植物の販売をはじめて儲かるのかどうか。

少し前に、NHKの所ジョージが司会をしている番組で「金のなる木」と称して、多肉植物のブームを取り上げていた。

サボテンやハオルチアなどの多肉植物がブームで、よく売れている。高額なものも出回っており、中には一鉢数百万円で取り引きされているものもあるそうだ。ブームのおかげかネットオークションなんかでもよく売れているらしく、奥さんと二人で副業感覚で販売をはじめたら月によっては本業の収入以上を売り上げるようになったという勤め人も紹介されていた。

植物そのものというより、一部の多肉植物に付けられたとんでもない価格や、それで一儲けしようという思惑をうみだすブームについての番組のようにも思えた。

もともと草花が好きで育てたりしている人は結構この番組を見ていたようで、多肉自体は扱ってなかった人でも、ハオルチアという植物が100万円するそうだ、とか、こういうのが最近流行っているらしい・・・など話題にしていた。そしてサラリーマンが本業の収入以上に稼いだという点もインパクトがあったらしく、そのへんで俄然興味を持った人もいるようだ。

ま、一般的にこういうブームは、NHKみたいな大手が取り上げるようになった時点でピークは過ぎたと思っておけば間違いないのではないか。今現在すでに何かしら植物を育てていて栽培の心得のある人なら、ついでに多肉植物を育てて余剰苗をネットオークションで売って、楽しみながら元をとるくらいのことはできるかもしれない。でもまったくの素人が利益目当てではじめるのには、もう遅い気がする。

利潤目当ての多肉栽培で恐いのは、一つはこういう紹介のされ方でみんなが注目して飛びつくことで、価格が暴落すること。

番組内では多肉植物用のクローン培養キットの販売をはじめた元大学教授だか准教授が紹介されていた。手軽に多肉植物を組織培養できる育成キットを販売したところ、世界各国から結構な量の問い合わせが来ているそうだ。元先生はブームに乗って培養キットの売上を今の十倍、いや百倍にすることを目指す…とかいっていたが、本気ならいかにも商売を分かっていない先生の言いそうなこととしか思えない。

あるハオルチアに一鉢10万円という値段がつけられとすると、その10万円の値段は、その一鉢しかないという希少性につけられた値段である。それが100に増えたとしたら、理屈から言えば値段は1,000円になる。実際には、クローン培養だからといってそう簡単に増やせるわけではないだろうし、大きくするためのランニングコストがかかるから単純に100分の1の値段にはならないだろう。それに一人だけが増やしている限り、供給量をコントロールしてある程度価格を制御できる。たとえば30くらいに増やしたものを、3万円くらいで販売する。それならば十分に儲かる。しかし、増えたものを手に入れた人たちが、それぞれ同じようにクローン培養をはじめたらどうなるか。あっというまに数は増えていき、それが知れれば値段はいっきに下がるだろう。

それでも、全部売り切れればまだいい。実際には、希少性に価値があった品種は、沢山増えた時点で無価値になってしまう。3万円だから売れた品種も、3,000円になったら見向きもされなくなってしまう。よって、最初に販売した人は儲かるけれど、二次三次となるに従って利益は減り、最終的にはだぶついて処理しきれなくなる。希少性の高いものというのは、そういうものだ。珍しいからみんなほしがるのであって、ありふれてるものはいらない、という心理がある。

それから、いまのブームの中心が中国での需要にある点。

番組でも中国でのすごいブームを紹介していたが、日本国内でも実は購入されるものの多くが中国、あるいは別の国からの需要によるそうだ。とくに一般の即売会ではないオークション形式の交換会なんかだと、外国の業者がどんどん競り上げていって落札し、日本の業者が欲しくても買えないなんてこともよくあるらしい。

一般的な商品はそうでもない。高額商品、希少性の高いものほどそうらしい。そのおかげで珍しいものの価格が伸びてきて生産者や販売店は潤っているけれど、今の相場は適正価格を超えて投機的になりつつある気がする。ここで中国のブームが終わるとどうなるのか、果たして適正価格に戻ってみんなたのしく多肉植物を楽しめるようになるのか、それとも価格の下落と共に植物自体も見捨てられ、「ハオルチア?そんなのもあったね…」といわれる時代が来るのか…。

わたしの考えでは、中国のブームが去ったとしても、多肉の人気は継続するし、多くの品種も栽培、販売が続けられると思う。10年以上前からこういう植物が好きな人は沢山いたし、多肉に限らないことかも知れないがなんといっても植物そのものに魅力がある。「多肉女子」などといって女性にも人気の高いことがテレビでは紹介されていたが、若い人や女性に人気があるのは愛好家のすそ野のひろさの証拠で、それだけで底堅い需要を予見できる。またブームのおかげで希少性の高い斑入や色変わりの育種が一気に進んだことも事実で、それによってまた魅力は増している。かりにブームが去ったとしてもそうして産み出された品種の美しさ、珍しさは変らず楽しまれていくことと思う。ただ、値段は安くなって欲しいけど。

まあ、今から高額商品とクローン培養キットを買って一攫千金を目論むのは止めた方が無難だろう。わたしは、もともと栽培する腕も場所もないので、もっぱら写真とかを眺めて楽しんでいる。

そういえば一昔前にゴキブリやらミミズやらを繁殖させて販売するなんていう話があったが、あれはいまどうなっているんだろう。このまま人口増加が続くと食糧難になって、そのうち昆虫食が当たり前になるなどとまことしやかに言われている現在、それが現実になればゴキブリ養殖はいいビジネスかも知れない。今は薬用での需要があるらしいが、食用となれば需要は一気に増加するはず。しかし、大量のゴキブリを飼う生理的嫌悪感を考えたら、金にならなくても静かにハオルチアを育てていたい…。

続き。

いまから多肉植物を販売して儲けることはできるのか。その2。
前に多肉ブームについて思ったことの続き。以前の記事はこちら。 また、NHKで多肉植物の育て方みたいな番組をやっていた。毎週やってる園芸番組かな。 そこで紹介されてたのは、ハウスが30棟もあるたぶん大手の生産者。ハウスが30棟ということは、よくわからないが相当たくさんの量を出荷していることだろう。全国...
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