アメリカン・ゴッズ 第5話「拉致」の感想。

とアメリカン・ゴッズ第5話。中休み的な第4話につづいて、物語が大きく進展します。そして、ここからやや原作と離れて独自の展開を見せ始めるようです。

第5話の冒頭でも、かつてアメリカにやってきた神が紹介されます。今回は時代を大きくさかのぼって紀元前14000年、まだマンモスとかがいる氷河期。

食料のある新天地をめざしてアメリカにやってきた部族が目にしたのは、やはり寒くて食料のすくない不毛な土地。部族の女司祭アツラは、マンモスに化身したような神、ナニュンニニに助けを求め、一族のピンチを乗り切ろうとする。

このパート、前編ピクサーとかディズニーみたいな3Dアニメで描かれています。独特なキャラクターデザインのアニメで、どこかで見たことあるような気がする。ゲームっぽい感じもします。たぶん力のあるスタジオが手がけているのでは。けっこう力が入っています。

氷河期の文献なんて残っていないので、このアツラもナニュンニニも作者の創作だと思います。それとも、ネイティブ・アメリカンに伝わっている伝承を元にしたのかも。

部族とともにアメリカにわたった氷河期の神ナニュンニニも、アツラの部族がアメリカに渡り、そして他の部族と徐々に融合していく中で徐々に信仰されなくなっていきます。

「それからほどなくしてナニュンニニは忘れ去られた。完全に・・・」

ここで語られるのも、やはり今まで何度も繰り返された信仰についてです。神には信仰が必要だ、ということ。そして、また次のようなナレーションが入ります。

「神は偉大だ。人間はそれ以上に偉大だ。神は人の心の中で生まれ、再び人の心に戻るからだ・・・」

どんなに強大な神も人間が信じなければ力を失う。むしろ人間がいるからこそ、神も存在しうるのだということですね。

本編では物語が大きく動きます。

シャドウとウェンズデイはなぜか銀行強盗がばれ警察に捕まりますが、それを仕組んだのは新世界の神々。警察署で尋問される二人の元に、(警官を皆殺しにしながら)テクニカルボーイとメディア、そしてふたりのボスと覚しきミスター・ワールドがやってきます。

そこでかれらはウェンズデイに、自分たちと手を組まないかと誘いをかけます。

ここでようやく明かされる真実。実はウェンズデイこそオーディンであり、彼の旅の目的はチェルノボグとか古い神々の協力を取り付け、一カ所に集結し、新しい神々と戦うことだったのです!第1話の冒頭で語られたアメリカにやってきた神とは、実はこのオーディン=ウェンズデイのことだったのでした。

って、知ってた・・・? まあ、さんざんほのめかされているので分かる人には分かるかもしれませんが、新旧の神の対立関係やウェンズデイ=オーディンについて明言されるのはここが初めてだと思います。

まあ、ウェンズデイがこれまであってきたのは比喩ではなく本当の古い神々だし、チェルノボグにはオーデンと呼ばれ、レプラコーンにはグリムニールと呼ばれているし。なんとなく、オーディンが他の神をどこかに誘って、何かしようとしてる、くらいは分かるかもしれません。

ウェンズデイはつねにはぐらかすような言い方をして何を目指しているのかは言わないし、このミスター・ワールドと対面する場面でもお互いが交戦状態にあるといった描写ではないので、分かりづらいかもしれません。

ただ、ドラマ的なわかりやすさからしたら、ここでウェンズデイが一発演説でもかまして、旅の目的を明確にしていてもよかったかなと思います。

原作でも、何も知らずに巻き込まれたシャドウの視点で描かれ当惑しながらふらふら彷徨い、そこにいくつもの挿話が入り込むという構成で、大きな物語の枠組みをがちっと説明してから話をすすめるわけではないのでわかりにくいのは同じ。

しかし原作では何も知らないシャドウは何も知らなくても寡黙にクールに行動してなかなかいい感じなのですが、ドラマの状況をまったく把握していないシャドウはちょっと間抜けに見えるところがありますね。

メディアを演じるのはXファイルで有名なジリアン・アンダーソンですが、今回はテクニカルボーイに説教する場面ではデビッド・ボウイみたいな格好で登場し、警察署ではマリリン・モンローの格好で登場し、なかなか芸達者。「ラスト・キング・オブ・スコットランド」という映画でもXファイルでのイメージとは全く違う役を演じていて、Xファイルの印象が強すぎますがなかなかいい役者のようです。

その警察署のシーンでウェンズデイを勧誘する場面。自分たちと手を組めばみんなオーディンを信仰するようになって、オーディン印のミサイルが北朝鮮に降り注ぎますよ、って、北朝鮮がミサイル実験を乱発する2017年現在、なかなか過激な勧誘の仕方です。

ミスター・ワールドとは一体何者なのか。名前の通り、世界統一を目指す?存在のようで、つまりこれまでアメリカに渡ってきた土着の神々のような地域性を排し、全国民から唯一信仰される存在を目指している、といった感じでしょうか。それからもちろん、世界中に張り巡らされたインターネットのイメージも重なります。

ウェンズデイもこれら新しい神々について「こちらの準備ができるまではお目にかかりたくない相手だ」として脅威を感じている一方、新しい神々もウェンズデイを軽んじるテクニカルボーイの非礼をわびるなどウェンズデイに対して一定の敬意をもって接している。状況的には新しい神々が一方的に優位に見えるのですが、ウェンズデイはそれをひっくり返そうと画策しているわけで、この辺の力関係が今後どうなるのか。

それから、シャドウの死んだ妻のローラもゾンビ状態でシャドウと対面します。ネコのおしっこと洗剤が混ざったような匂いって、最悪ですね。

レプラコーンも登場して、幸運のコインを失って以来ひどい目に遭うのがかれの役割になったのでしょうか、キャラが定着してきて魅力がでてきました。コインを奪おうとローラと取っ組み合ってるところに警官が登場して、ローラに「死んだふりをするな!」という場面は笑えます。もちろん、逮捕されて警察に連行。レプラコーンのあつかいも原作より大きくなっているようで、コミックリリーフとしてか、大筋に関わってくるのか、今後の活躍に期待できます。

警察署でウェンズデイの手錠を外してくれた小さなクモ。あれはもちろん、第2話で登場したアナンシーですね。

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