「残穢 住んではいけない部屋」という映画を見ました。
ながらでぼけーと見始めて、おしゃべりしながらだったりあまり集中してなかったのですが、かなり面白かったので途中から真面目に見ました。
Jホラー好きなら一見の価値あり。
全体的に地味で、とくに前半とか冒頭にガツンと来るフックがないのでちょっともったいない印象。でも、丁寧に作られていて、ホラーとしてもきちんと怖いので最初で投げずに最後まで見る価値は十分あります。
主人公は怪談作家の竹内結子演じる「私」で、一般から募集した実話を元に怪談を書いている。である日、もう一人の主人公である橋本愛(久保さん)が手紙を送ってきて、住んでいるマンションの部屋から変な音がする、とかいう。
久保さんは大学で(たしか)オカルト研究部に所属しているちょっと変わったお方で、そのせいか「私」と一緒に、自分の部屋の怪現象の由来を調査し始める。久保さんの住むマンションでは他にも妙なことが起きているようで、もしかすると建物の自体に因縁があるのかもしれない…。
前半はうろ覚えであれなんですが、「私」は過去に久保さんと同じマンションに住む人から怪談のお便りをもらったことを思い出し、久保さんはかつてここに住んでいた人が自殺したことを突き止め、さらにマンションが建つ前、その敷地にどういう家があり、どういう人が住んでいたのかを調べ始めます。
ここから始まる一連の長い起源調査が本作のメインストーリーとなります。でこれが、地道な犯罪捜査を見ているようで面白い。ちょっと出来過ぎではあるんだけど、空振りがなく、すべての過去が曰く付きのネタに小気味よいくらいつながっていきます。この辺から徐々に映画に引き込まれていく。
途中まで、怪奇現象抜きで面白い。
この映画はオカルトホラーなんだけど、このあたりのもう一つのポイントはオカルト抜きでも怖い話に見える、という点。つまり、主人公たちが調査する過程で出会う出来事は、痴呆、ゴミ屋敷、統合失調症、一家心中など、ごく普通の社会で遭遇しうる悲惨な出来事になっている。どんな心霊映画も、おばけがいないことにすれば表面的には登場人物が勝手に発狂しておかしくなったという風に解釈出来るものだろうけど、この映画では意図的に、心霊現象抜きの異常行動と受け取れる描き方をしている。それで心霊ものではありながら、祟りだなんだという嘘くさい話に終始するのではなくて結構生々しい雰囲気がでてくる。
それから、登場する脇役の人たちや小道具、過去の映像なんかが結構頑張っている。とくに脇役の人たち、どういうあれをしてるのかわからないが、配役のせいなのかちょっとした演技のせいなのか、いちいち微妙に怖い。久保さんの隣に引っ越してきた家族の奥さんがドアを開けてドアごしに首だけ出して会話するところとか、赤ん坊の鳴き声が聞こえるというおばさんとか。久保さんより前に「私」に同マンションでの体験を応募した奥さんも、髪型も含めなんか妙に怖いし、部屋の片隅を見つめるその子どもも、妙に目が大きくて怖いようなきがする。あと久保さんの前に同じ部屋に住んでて自殺した人(渋谷謙人)とか。ほほコケすぎてる。
小道具も頑張っている。昔の写真とか、明治時代の記録とか、曰く付きの美人画とか。新聞だか雑誌の記事はフォントがちょっと嘘くさいけど、全体的に非常にそれらしく出来ている。不気味な声とか、昔の映像の雰囲気もけっこういい。
そういうのが相まって、なかなかいい怖い雰囲気が醸成されている。
そのあとストーリーは、佐々木蔵之介演じる怪談作家の平山芳明(明らかに平山夢明がモデルだろう)とかその知り合いの寄り目がちな若いイケメン(坂口健太郎)とかを巻き込んで、「私」も原因不明の首の痛みに悩まされたりして、実はすべての大本は九州だった、実は「私」が以前とりあげたネタとも関連があった、みたいなことになって、九州の廃屋を探検して、いろいろあって、また関連ある人が死んだりして。でも「私」の首も治って、久保さんも今は元気に社会人をやってます。
みたいな、結局呪いとかそんなものないんだよ、という結末かと思わせておいて、突然主人公の新築の戸建てに電話がかかってくる。深夜1時、それも公衆電話から。
最後に現出する心霊的な要素については、そのネタに触れた人すべてが祟られるという無茶苦茶ぶりが結構好きです。まあ、論理的に考えるとやっぱり無理があるんですが、映画を見ている範囲では勢いで没頭させてくれます。あと住職、結局お前供養してなかったのかよ…嘘つき。このオチも、美人画の不気味さと合わせてなかなか後味の悪い感じ。
橋本愛は「告白」とか「桐島、部活やめるってよ」と比べると一見別人みたい。髪型のせいかな。山下容莉枝が編集長?の役で出ていて、よくわからない雰囲気で面白い。
まとめ
そういうわけで、久しぶりにJホラー?らしい雰囲気たっぷりの後を引く怖さを感じられました。派手目な演出とか、ハッタリはないので地味ホラーですね。でもやっぱりゾンビとかピエロに扮した化物の怖さとは異質の、びっくり演出とかなくても闇や空間が怖くなるような感じが日本ホラーのいいところ。かなりいい線いってる映画だと思いました。ヒットしたかどうかは知らんが、出演者とかみると結構予算かけてるんでしょうか。このクラスの映画がばんばんでてほしいですね。
なお、この映画を見ている間に2回ほど怪現象がおきました。
- 残穢 -住んではいけない部屋-
- 監督:中村義洋
- 2016年
- 上映時間 107分