ホラー映画が怖いのはなぜか。
ひとつは、日本の怪談に代表される、後ろに何かがいるんじゃないか、というようなじっとりした心霊的な怖さ。
もうひとつはスラッシャー映画に代表される突然のショック演出によるドッキリ。
この2つをブレンドし、さらに映像効果や効果音で味付けすることで、見るものを恐怖させる恐ろしいホラー映画が誕生する。
じゃ、ホラー映画を怖くなくするには? 上記の要素を打ち消し、なるべく映画の効果を弱めるようにすればいい。
1.人と一緒に見る
たった一人でホラー映画と対峙するより、多人数で立ち向かったほうが心強い。誰かが真剣に見ようとしても、他の誰かがお菓子を食べたりしょうもない感想を述べたりして気が削がれ、結果として映画の力を弱体化することができる。びっくりする場面ではみんながびっくりするものの、そこからの回復も早い。
ただし、映画が強すぎて全員が映画に飲まれてしまった場合、一人で観ているときよりもさらに強力な恐怖に場が支配されてしまう可能性がある。その点だけ注意が必要。
2.狭い場所で見る
1と関連して、狭い場所で小さい画面で見るのも映画を弱めるのに有効かもしれない。
たとえば都心の狭いワンルームで、隣の部屋の生活音が聞こえるようなところでホラー映画をみても対して怖くない。そういう部屋に数人あつまってわいわい観て、なおかつ怖いものがあったら、それは本当に怖い映画に違いない。
3.真っ昼間に見る
暗闇は根源的な恐怖の源である。これは人間の本能に根ざすものでどうしようもない。暗闇はホラー映画の恐怖を増長する。なので、明るい昼間に部屋の電気も全部つけて見る。カーテンを開けるか、カーテン越しに自然光が入ってくるような環境だと恐怖も半減する。
4.音を小さくしてみる(あるいは消す)
物語の怖さで勝負してくるホラー映画は少ない。多くは画面のインパクト、凄惨な場面かあるいは突然のショックで怖さを演出してくる。その際、効果音は非常に重要になる。
なので、その効果音を小さくする。これは非常に影響が大きい。場合によっては、それがショックシーンだと気づかないこともあるし、無音だといきなりコメディみたいになってしまうものもある。
5.撮影の舞台裏を知り、作りものであることを認識する
どんなに怖い映画でも、映画である以上それは作りものである。なんとかして観客を怖がらせようとスタッフ一同一生懸命頑張って作ったものである。特典映像なんかでそういう舞台裏を知れば、とたんに一歩引いた視点で映画を観察できるようになる。さらに、笑えるNGシーンなんかを見れば全く違った映画に思えてくる。
ホラー映画のジャンルの一つに実話怪談ものがあり、さらにファウンド・フッテージものが発明されたのは、この弱点を乗り越えようとする流れとして当然のこと。
6.慣れる
人間は繰り返し触れる物事に慣れていく性質がある。慣れるにつれ、初めて接したときの感動、衝撃は薄れ、弱まっていく。ホラー映画も同じで、何度も観ているうちに恐怖に必要な閾値は高まっていく。
とくに、生理的に嫌悪感を覚えるビジュアル的な怖さに対しては慣れが極めて有効となる。ただ何にでも慣れればいいというものでもない。苦手な場面を含めても、全体として見る価値のある映画だけを見分けられれば簡単なんだけど。
何度観ても、もう怖いとは思わない。それでも観たくなる映画には、ジャンルを超えた部分での、あるいは映画自体の魅力があるんだと思う。
映画を怖くする方法
上記の点を考慮にいれれば、ホラー映画が苦手な人でもホラー映画をみやすくなるかもしれない。ホラーというジャンルにくくられているけど、実はそうでもない映画もたくさんあるし、怖い映画ではあるけれどそれ以上に面白い映画もたくさんある。
また上記の点を参考に、より怖さを際立たせる環境で映画を見ることもできる。
深夜、郊外の一軒家で。あるいは寂れた田舎町の廃墟の一室で、一人きりで。そういう環境では、DVDデッキの作動音や、レンタルした映画の予告編と本編の合間の僅かな間さえも怖く感じる。そして映画を見終わった後の静寂もこの上なく怖いことだろう。
これだと、ホラー映画じゃなくても怖いかも。