成宮寛貴引退のニュースを読んで映画「クロユリ団地」を思い出した。妙な動きの前田敦子や序盤の雰囲気が一番怖く、だんだん尻すぼみになっちゃうホラー映画。

成宮寛貴という俳優が引退するとかでニュースになっていた。週刊誌のフライデーに報じられてコカイン吸引疑惑を報じられ、それだけでなくゲイであることまで暴露されてしまい、成宮は「はめられた」と絶望してしまったようだ。

ネットで調べてみたら、フライデーに掲載されたコカイン吸引時の現場とされる写真では、コカインじゃなくてねるねるねるねとか、たのしいケーキ屋さんというおかしを食べているだけなのでは?というつっこみが入っていてよく見ると確かにそうかも・・・と思える。

しかし友人の証言とやらを読むと、成宮がコカイン中毒で、さらに他の薬物も使用していたと明言されていた。真偽は不明だが、もう事務所も辞めてしまったということだ。

それで、前に見た「クロユリ団地」と言う映画にこの人が出てたのを思い出した。よく知らないので、年格好からしてジャニーズの人なのかと思ってた。

「クロユリ団地」は「リング」とかを撮った中田秀夫のホラー映画で、主人公が元AKB48の前田敦子ということで話題になってたと思う。それから、ものすごく恐いという評判で、ほんとかなと思いながらDVDレンタルしてきて見てみた記憶がある。

映画は結構いい雰囲気だった。急におばけが出てきてびっくり、見たいなテイストではなく、日本的ななんとなく不気味な雰囲気がよく出ていた。でもラストに近づくにつれてだんだんしょぼくなっていって、化け物が顕在するところではなんかちゃちい特撮だな・・・みたいな冷めた感想を抱くようになってしまった。

冒頭は前田敦子がクロユリ団地に引っ越してくるところから始まる。

家族が引越し荷物を開けたりしてる様子がホームビデオ風に、ということは少し流行っていたフェイクドキュメンタリー風に映し出される。ホラー映画だから何かが起きるのでは、という期待感と、絶妙に不安定なカメラや間合いがあいまって、正直この冒頭が一番恐かった。

その後も前田敦子の壊れたロボットみたいなギクシャクした歩き方とか、同じ会話を繰り返す家族の違和感とか、いい感じで謎と怖さが展開されてよかったんだけど、あからさまに不気味な隣のおじいさんが出てきて、そのおじいさんは孤独死していたってあたりからその、怖い「雰囲気」が薄れてくる。

その後、前田敦子が近所の公園にいる幼い少年と友達になったり、老人の死んでいた部屋を片付けに来た特殊清掃業者の成宮寛貴と知り合ったりして、やがて衝撃の事実が明らかになって、最後に化け物が出てくるんだけど、衝撃の事実が明らかになったところで話のトーンがちょっと変わる感じ。

最後は皆が化け物のせいで不幸になってしまうという後味の悪い終わり方で、成宮寛貴も取り付かれて悲惨な目に遭わされるんだけど、このあたりの特撮というか、化け物の姿がどうもちゃちな印象を免れない。けっこう強力なおばけなので、どうせなら生前の姿を留めないほどに変身して暴れ狂ってくれた方がよかったんじゃないかなーと少し思った。前半のなにか不気味な奇妙な雰囲気がよかったせいで、それを転換するにはこの小さなおばけと特撮ではちょっとパワーが足りないように感じてしまったんだと思います。

前半のみょうな雰囲気とか、衝撃の事実とか、黒沢清の「リアル~完全なる首長竜の日」にちょっと似てる。

でもまあ、なかなかよかったと思います。前田敦子は元AKB人気ナンバーワンが女優とかやたら話題にされてた記憶があるけれど、まあ普通に演技もしてたと思うししゃべり方?声なんかも含めそれなりに存在感があると思います。成宮寛貴はチャらそうな外見に反してなかなかいい人を演じていて、これも悪くなかったと思います。

成宮寛貴はコカインが無実なら、俳優を止めてしまうのはもったいないと思いますが、ゲイを暴露されたことで心を痛めたというのなら可哀想ですね。イアン・マッケランとか同性愛者で活躍している人は沢山いるので、それが引退の理由ならなおさらもったいない。日本ではまだ受容が進んでいないのでしょうか。

  • クロユリ団地
  • 監督: 中田 秀夫
  • 2013年
  • 上映時間 106分
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