いじめ、復讐、過剰な暴力、人間関係。「ミスミソウ」の感想。

押切蓮介の「ミスミソウ」が映画化。とても暗いスプラッタでいじめな話なのでなかなか映像化は思いつきませんでしたが、どうなるんでしょうか。

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傑作ホラー漫画「ミスミソウ」

「ミスミソウ」は基本的にはいじめとそれに対する報復がネタの、典型的な「キャリー」タイプの話。一応ホラー漫画ということになっていて確かに怖いが、超常現象の類は一切出てこない。ジャック・ケッチャムの「隣の家の少女」みたいな、いじめが進行して陰惨な事態に発展してしまうタイプのお話。

はっきりいって万人におススメできる漫画ではないと思うが、衝撃度や不快感という点では相当上位に位置する。不快は不快なんだけど、読んでる最中は不快でも読後感は不思議と爽やか。

この漫画では思い出したくもないようなひどい事件が語られるんだけど、怖いもの見たさで再読したくなるような部分がある。ただ不愉快ってだけではなくて人間の弱く暗い一面と強さを描いて見せてくれる名作。

とりあえず、原作の感想です。

いじめの度が過ぎて犯罪になってる。

「ミスミソウ」が他と際立っているのは、主人公に対するいじめがちょっと度を越している点。「隣の家の少女」もひどかったけどそれ以上かな。ネタバレになりますが「ミスミソウ」の主人公は家に灯油だったかガソリンをまかれ火をつけられ、両親を焼き殺されてしまいます。そして最愛の妹も全身大やけどで意識不明の重体になってしまう。後に病院で死亡します。

それまでも、転校してきた主人公に対してクラスメートからちょくちょく非道いいじめがあるのですが、いっきにエスカレートしていきなり放火殺人という展開には驚いた。火を付ける連中もここまでになるのは想定外だったようだがちょっとひどい。とはいえ、これによって後半の主人公の暴走が読者的には納得されるので、構図としてはまあわかります。

あと、主人公一家の暖かな家庭生活がきちんと描かれているので、それがいとも簡単に崩壊してしまう点でより衝撃度が増します。この作者は割と細やかな心情描写、家族愛、友情なんかも描けるのですが、そういったところが読者にショックを与えるためには極めて大切であるということがよくわかっていると思います。

そして主人公に対するいじめだけではない、主にいじめる側の学生同士の嫉妬、ねたみといった感情、また力ない教師といった要素などがあるおかげで漫画に深みがでている。

いじめっていうのはそういう人間同士の感情のひとつの表出のされかたに過ぎないんですよね。むしろこの漫画は後半の、いじめと復讐という構図のなかにいろんないやな感情が渦巻いているところがメインといってもいいくらい、人間関係の綾が真面目に描かれてるように思います。

エグいスプラッター描写が特徴的。

後半になって主人公の復讐物語が始まるのですが、ここはこの漫画がホラーとして際立っているところ。過剰なまでのスプラッタ描写、肉体損壊描写でエグいです。

舞台は日本で出てくるのは学生なので、登場する危険物はせいぜい包丁とかなんですが、それが威力を発揮する時の描写が結構エグい。さらに押切蓮介のやや荒目の描線もスプラッタシーンの迫力を増して効果的。この人の絵はちょっとちょっと粗さが目立って、もっと上手くなるように思うのですが、この漫画を読む限りやっぱりこれはこれで完成された画風なのかな、と思います。

さらに物語の面でももうひとつ意外なひねりが加わっていて、クライマックスに向けてちょっとした驚きが待っています。このあたりも、さんざん残酷な物語につきあわされてきた読者にさらにダメ押しをしてくれて、ホラーとしては申し分ありません。

人間関係、感情のもつれがきちんと描かれているからこそ、切なさが際立つ。

基本的な部分でキャラクターを共感可能な人物として見せる描写がされているからこそ、激しい場面が激しく胸に迫ってくる。個人的にはもっと明るい話が好きではあるものの、単にグロとか残酷なだけではない人間関係を描いた点が評価される秀作です。長さも全3巻ときっちりまとまっているし、これはインパクトを失わないうちに読み切れる長さであるという点でもうまく行っていると思います。

映画版も期待。

長さ的には映画化にはちょうどいいサイズなので、題材としては悪くない。あとはどのように原作の過激な描写を映像化するか、その胆力と演出力が問われますね。残念ながら上映中は見に行けなさそうなので、どっかで配信されるかソフト化されたら観て感想を書きたいと思います。

なお、押切蓮介の「サユリ」というホラー漫画、こちらもおすすめです。これは呪われた家タイプの話ですが、やはり他の似たようなネタとは一線を画しています。

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いま出てるのは完全版。全3巻が上下巻にまとまって、さらに「大幅加筆」とのことなのでどうせならこっちを読んだほうがいいでしょう。
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