「100年予測」の感想。2050年に日本とアメリカが戦争する?

将来、だいたい西暦2100年くらいまで、各国のパワーバランスがどうなるかを予測した本。

もちろん当てずっぽうじゃなく、地政学をメインにテクノロジーの発達や各国の人口動態の推移を予測して起こりうる事態を導いている。

同じ著者で「ヨーロッパ炎上 新・100年予測」というもっと新しい本があるけれど、似たようなタイトルだけど書かれていることはぜんぜん違うのでどちらをよんでも大丈夫。「100年予測」はアメリカ中心で、ほんとに100年後まで予想しているのはこっちのほう。

「ヨーロッパ炎上~」は著者や家族の個人的体験が取り入れられていて、不思議な色彩のある本になっていた。ヨーロッパという他民族が複雑に絡み合う世界を説明する上では、そういう主観的な視点がないと理解困難な込み入った事情がいろいろあるので、あえてそういう「ヨーロッパ出身」としての立場で書いていたんだと思う。

それに比べると「100年予測」はもっとドライで、地政学的解釈とはこういうものです、というのがよく分かるようになっている。ジャレド・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」が文明単位での歴史の解釈だとすると、こちらは国家単位での歴史解釈になっている。

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地政学的に考えた、今後100年の動向。

で、この本によると地政学的には国家の趨勢はほぼ地理的な条件でどうなるかが決まっている。逆に言うと一国家がどんなにあえいでも、地理的条件を逃れることはできない。それによって、国家にできる選択というのは自ずと限定され、取りうる行動はある程度決まってくる。45代アメリカ大統領のトランプが北朝鮮とどんな取り決めをしようと、それが理由で北朝鮮が突如世界の大国になることはありえない。

そういう地政学的視点、さらに世界の経済成長、科学技術の発展、人口動態なんかをもとにして本書では今後各国の取りうる行動を100年近くにわたって予測している。もちろん、すべての国が自国の繁栄を目的に活動していることが前提になっているんだけど、もうひとつの前提は事実としてアメリカがほかを圧倒する大国である点。

地理的条件が変わらない以上、上記の条件を当てはめると各国のたどる道はだいたい見えてくる。そして、それは従来からたどってきた道とそれほど逸れることはない。つまり、100年という短いスパンでは、歴史は繰り返すということになる。

この本の予測を大雑把に書くと、次のようになります。

  1. 2020年ごろ中国崩壊。
  2. 2020年ごろロシア崩壊。
  3. 2030年ごろのアメリカの再成長。
  4. 日本、トルコの台頭。
  5. 2050年、アメリカvs日本トルコ同盟。
  6. アメリカの勝利、さらなる繁栄。
  7. 2080年、メキシコの台頭。

ここで断っておくと、そもそもこの予測があたるとは著者は言ってません。多少なりとも未来の感覚をつかめれば、という程度。ただし、過去の歴史の転機となった要素を分析して、それぞれの要素を現代に当てはめ、延長しているので、当てずっぽうとかいい加減な予想ではありません。地理的条件はもちろん人口、資源、科学技術、軍事についての捉え方はあながち間違いとも言い切れないと思います。

ロシア、中国の崩壊。

ロシア崩壊、中国崩壊については、2018年現在、どちらも大国主義が最大化しているような行動をとっています。ロシアについてはほぼこの本の予測どおりの行動のように思えます。勢力拡大を目指し、やがてアメリカと第二次冷戦状態になり、滅びる。実際に滅びるかどうかはわかりませんが、ウクライナに手を伸ばしてますね。

中国については、結局中央政府が統制しきれなくなり崩壊する、という予測。経済発展が地方にまで波及せず、富める地域とそうでない地域とで対立が勃発する。まあ、中国経済は間もなく崩壊する、と少なくとも5年以上は言われているけど、どうなんでしょう。たしかに中国の一部では好況に沸いているようだけど、広すぎて貧富の差、どころか文化の差が大きすぎるというのは確かなようです。

アメリカvs日本トルコ同盟の戦争勃発。

そんなこんなで予測としてはなかなかおもしろいのですが、一番おもしろいのはアメリカvs日本トルコ同盟の戦争を描いた章。

ここはやけに具体的に、アメリカポーランド同盟と日本トルコ同盟の戦況が記されます。やはり大国アメリカに勝利するには不意打ちによる短期決戦しかないということで、第二次大戦と同じく日本軍の奇襲が戦争の端緒となるのですが、それがなんと月面基地からのアメリカ宇宙ステーション攻撃なのです。トルコが地上で陽動作戦を行い、その隙に月面から発射されたミサイルがアメリカのバトルスターを破壊する。

で、制空権(制宙権)を失ったアメリカ相手に一気に攻勢にでて、地上の攻撃基地を次々に破壊し勝利目前かと思われた日本。しかし、アメリカは極秘裏に予備の宇宙ステーションを建造していた。さらに敵国を欺くため、数十年前からロケット発射基地を各地に偽装配備していたのでした。

そんなことを知らない日本はアメリカと停戦交渉を準備する。お互いに交渉の準備を進めていたが、実はそれはアメリカが反撃するための時間稼ぎに過ぎなかった。そして攻撃準備が整ったアメリカはまず秘蔵していた対衛星ミサイルによって日本トルコ連合の偵察システムを破壊(もちろん、アメリカは日本の軍事基地の場所などは完璧に把握済み)。そして監視能力を失った日本トルコの軍事基地を攻撃。こうして戦況は激変。

同じく、地上でも戦闘が展開。この時代、歩兵戦の主力はパワードスーツを着込んだ機甲歩兵になっています。まさに一騎当千の攻撃力をもつ機甲歩兵ですが、まともに可動させるためには莫大な電力が必要となる。地上戦ではトルコが一気にルーマニアを落とし、ポーランドに攻め込みます。この地上戦でも、アメリカの支援と技術力、そして底力が鍵になります。

そのころは、極超音速戦闘爆撃機などが最強兵器となっていて、地上の標的さえ確認できれば近距離であれば数分、遠くても数時間もかからずに攻撃可能となっています。それを実現するためには強力な索敵能力が必要で、だったら宇宙に監視システムを配備するのが最も強力だろうということで、巨大な宇宙指令センターが稼働しています。

米ソ冷戦時代にもスターウォーズ計画が真面目に計画され、ある程度は実施されていました。荒唐無稽に思えるかもしれませんが宇宙ステーションはすでに稼働しているし、この本に書かれているように本当に軍事面でのメリットが絶大であれば、宇宙への軍隊の配備もありえるかもしれません。

細かい予測を読むのではなく、発展のしていき方を掴むために。

ここで書かれている戦争は基本的に第二次大戦の繰り返し、という視点で描かれているし、そもそも本当にこういう形で戦争が起きるかどうかはかなり疑問ですが、むしろここで注目するべきはそこで各国が置かれている立場、そして宇宙利用などの技術力の進み具合といった点でしょうね。

著者もいっているように、こうした予測は細部に至るほど外れる可能性が高くなる。あくまでも21世紀が「どんな感じ」になるかを伝えることが自分の目標だということです。そう考えると、漠然と将来を妄想するのではなく各国の置かれた状況から起こりうる摩擦や対立を考えていくこの本は、全体像を大づかみにする意味でとても面白い。

著者が一つ、全体を通じて言っているのは21世紀がアメリカ中心の世紀になるということで、つまりアメリカという大国がまずあって、そこに周りの国がどう対処していくのか(どう挑戦していくのか)が主要な争点になるということ。2016年にトランプが大統領になって、その構図はすごくはっきりしてきている気がする。

まとめ

この本で書かれていることが荒唐無稽かどうか。著者は、20年でいかに世界が変わったか、少し前の常識がいかに通用しなくなるかを引き合いに出して、ここでかかれていることは今読むとありえないように思えるかもしれないが、決して荒唐無稽なたわごとではないといいます。

わたしもそう思う。日本vsアメリカにしても、実際に太平洋戦争を起こしている日本が再度同じ状況に陥ることはありえないどころかむしろ可能性としては高いでしょう。ただ、アメリカが知らず知らずのうちに日本&トルコを追い詰めてしまい、そのけっか窮鼠猫を噛む形での開戦という歴史の繰り返しについては、軌道修正を図れるのではないかという希望も持っています。