ネットフリックスの「バキ」の感想。

これも一気見したアニメ。なかなか面白かった。というより、前半は間違いなく面白かったが、後半で失速した。

格闘アニメなんだけど、登場人物がほぼ全員常軌を逸した能力の持ち主である点が面白い。まず、主要な登場人物6人が全員死刑囚。そして絶対に脱獄不可能な刑務所を脱獄する。死刑を執行されても死ななかったり、潜水中の原子力潜水艦から脱出して泳いで逃げたり、垂直かつ手がかりがなにもないつるつるのミサイルサイロの発射口を素手でよじ登って脱出したり。

そいつらが全員、脱獄して東京にやってくるんだけど、その理由が全員敗北を知るためで、お互いに知らないのに同じタイミングでやってくる理由がシンクロニシティというのも受ける。

その後の格闘シーンもそうなんだけど、強さの追求が一線を超えてギャグになってしまっている部分がある。「シグルイ」という漫画に似ていて、ただあちらはまだシリアスな範疇にとどまっていたような気がするが、バキは作者の側もギャグになりうることを理解して話を作っている感じ。各人の能力が現実には絶対にありえないようなものばかりで、刑務所からの脱出っぷりを見てもそれはわかるんだけど。

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試合形式じゃない、なんでもありのファイトが魅力。

で、本編のメインはその死刑囚同士の対決なわけだが、それがトーナメントとか試合形式ではない、成り行きまかせの喧嘩という点が一番魅力的なところだと思いました。

まず、どこでだれがだれと遭遇するか、予測がつかない。死刑囚以外に、主人公のバキやその周囲のこれまた常識はずれの技能・体躯の持ち主が複数登場して、突然戦闘が始まる。

さらに戦闘の決着がなかなかつかない。ここに登場する狂人たちにとって、全身滅多打ちにされる程度のダメージは少し休むと回復するくらいのものらしく、一度ボコボコにされたり火だるまになったりして退場した人が平気な顔で再登場する。

試合じゃない喧嘩というのもポイント。つまり、ルールがない。武器の使用もすべてOK。凶悪犯たちはどんな手を使っても相手を倒せばいいと思っている。卑怯などという言葉は通用せず、負けたほうが弱い。ある意味何よりもわかりやすい行動原理に従って動いている。逆に武道家は反則という概念にとらわれているフシがあって、その隙をつかれて手酷いダメージを受けることがある。

やられたと思っていたやつが再び登場したり、どう転ぶかわからない展開が続く。いくつかのバトルは面白いし、死刑囚はやがて敗北し再起不能になっていく。

物語の展開はでたらめで、適当。

しかし、興味深い展開が続くのは途中まで。そのうち死刑囚たちと同じ重さで他の登場人物がしゃしゃり出てきて、次第に話の流れが混乱してくる。

おそらく前作に登場したであろう人物がいろいろと出てくる。それはまだいいが、そいつらに死刑囚たちがあっさりやられてしまう。それは最初に負けたフリをしているだけで、その後でまた登場してさらに裏をかいたバトルを繰り広げるんだよね? と期待していると、なんとそのまま終わってしまう。

毒手の使い手である柳龍光は、シコルスキーと二人がかりでバキに挑んだのにあっさりと負けてしまう。理由は、バキが愛を知ることで覚醒したからというちょっと反則っぽいもの。

シコルスキーはその後、ミサイルサイロを素手でよじ登った狂人なのに、ジャックという更に強力な男に易易と拉致され、地下闘技場に連れ込まれる。そこで環境利用闘法とかいう胡散臭い戦い方をするやつに砂をぶつけられ、ほとんどズルのような理屈で負けてしまう。

バキの父である範馬勇次郎、並びにビスケット・オリバという死刑囚たちよりさらに強力な化物も登場するが、これも話に絡むようで絡まない微妙な立ち位置で、死刑囚たちの後始末役を安直にあてがわれているように見える。範馬勇次郎が、バキと彼女が一緒にいるところにストーカー的にちょくちょく現れるのは笑える。

結局、最後は中国で天下一武道会みたいな100年に1度の格闘大会が行われることになって、それにバキとか範馬勇次郎とか、とつぜん登場したアライJrとかが参戦するとかいうことになってシーズン2が終わってしまった。

え、死刑囚たちってあれで終わりなの? と肩透かしをくらった気分になりました。

思うに、最初に死刑囚全員をあまりに強力に設定したために、各キャラクター間の戦力バランスが取れなくなってしまったのかもしれない。それでも最初の数ファイトは面白かった。その後はドイルという死刑囚vs烈海王という中国武術の使い手の争いは面白かったけれど、その他はちょっと、納得のいかない点もありました。

バキがいきなり強くなるのは主人公だから仕方ないのかな。でも、愛を知ったからという理由は格闘アニメにしてはちょっと安直だし、主人公だからこそもうちょっと格闘技らしい理屈で相手を圧倒してほしかった。

行き当たりばったりのどこでだれが戦うかわからないストリートファイトだからこそ、物語の展開をきっちり練ってほしかったと思いました。本当に、ただ行き当たりばったりで戦っているだけなので物語としての盛り上がりは感じられませんでした。いつの間にか死刑囚はみんなやられていて、なし崩し的に中国に行っちゃった感じ。

それぞれのエピソードを楽しむアニメ。

ただ、別の見方をすると全編を通してフラットに面白いとも言えるので、それはそれでいいのかもしれない。それぞれの戦いは常識はずれの攻撃力同士のぶつかり合いがなかなかおもしろいので、ストーリーの盛り上がりとかははなから無視して、個々のエピソードを楽しむというのがこのアニメの楽しみ方なのかもしれません。

アニメのクオリティは、普通。ちょくちょく絵が下手っぴになります。あと時々CGになる。CGのクオリティはなかなか良かったと思う。ただ、このアニメの戦闘は独特で、とりあえず相手の一発をフルに食らってから、反撃というターン制バトルのようなやり方が多く、また一発一発が重いのでほとんど止め絵のような不思議な感じになる。なので、せっかくのCGもあまり出番がない感じ。

まとめ

有名なシリーズなので多くの人が知っている。定食屋とかラーメン屋でパラパラ読むことはあったけど、通して見たのは初めてでした。そして面白かった。シーズン2が終わったばかりだけど、このあともたぶん続くんでしょう。でも、死刑囚編が面白かったのでいきなりわけの分からん中国の大会になってしまってちょっと興味が薄れた。

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