アメリカ最悪の連続殺人鬼なんてじつは存在してなかった!ヘンリー・リー・ルーカスの虚像を暴いたネットフリックスの「 コンフェッション・キラー: 疑惑の自供」の感想。

ヘンリー・リー・ルーカスと言えば、アメリカでも最悪の連続殺人鬼じゃないですか。最初は数十人の殺しを自供してて、それだけでもすごいんだけど最終的には3000人殺したって。さすがに3000人は大げさでも、どうも300人以上は殺してたらしいとか。

彼を主人公にしたマイケル・ルーカー主演の「ヘンリー」っていう映画も、大げさな演出とかないんだけど息をするように人を殺すヘンリーの様子が怖かったし。もうヘンリーが町にいるだけで死体が量産されていくような。感情のない、空虚な人間性も不気味だったし。

そんな、とても恐ろしい連続殺人鬼のヘンリー・リー・ルーカスのドキュメンタリーがネットフリックスに登場。さっそく見てみました。

そして内容に驚愕。なんと、ヘンリー・リー・ルーカスは連続殺人鬼ではなく、彼の自白の大半は嘘だったというびっくり仰天の内容だったのでした。

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連続殺人鬼ヘンリー・リー・ルーカスの自白は、実は嘘だった。

これ、かなりびっくりなネタだけどなんで今まで知らなかったんだろう。珍説?最近発見された証拠とか?と思ったら、なんのことはない、本国アメリカでは結構前から言われていることだった。ルーカスの事件に疑問を感じた記者が自白の信憑性を調査して、1985年に記事を発表している。自白通りに犯罪を犯してたとしたらとんでもない、ありえない距離を車で移動してなければだめだったり、犯行同士の時系列が矛盾する。

日本で調べてみると、多くのサイトでは未だにヘンリー=連続殺人鬼という認識のままで情報がアップデートされてないみたい。ウィキペディアにもネットフリックスの番組について数行書いてあるだけで、この疑惑についてはほぼ触れられていない。

アメリカでも未だにほんとにヘンリーを連続殺人鬼だと思っている人はいるみたいだけど、現在ではルーカスの自白は嘘、ってことが定説になってるっぽい。ただ、ヘンリーを主に取り調べていたテキサス・レンジャーズが自分たちは間違ってないと言い張っていたみたいで、公式な発表はなんかうやむやになっている感じがする。ヘンリーはすでに死去していて、掘り返しようがない。

このドキュメンタリーを見る限りヘンリーが嘘の自白を繰り返していたことはほぼ間違いないように思える。

ヘンリーの性格。

ヘンリーがまったく犯罪をおかしていないということではなくて、実際に母親を殺害したみたいだし、他にもひょっとしたらヘンリーが関わっている事件もあるのかもしれない。とくに若い頃は各地を放浪していたようで、どこかで犯罪を犯していてもおかしくない。ただ、それも初期につるんでいたオーティス・トゥールって男の影響が大きい気がする。

このオーティスという男はIQ75で知的障害があったらしいけど、このドキュメンタリーの映像をみると、ヘンリーも似たようなものって雰囲気がある。

ヘンリーの性格については、嘘がうまいとか、記憶力がいいとかいろんな証言があるもののどれも印象でしかなくて、映像にうつるヘンリーを見る限り、ちょっとトロい男っていう印象がつよい。日本の週刊誌かなにかの取材クルーがヘンリーにインタビューする場面がある。そこで記者が冗談半分で日本でも犯行を犯してるのではって尋ねるんだけど、ヘンリーはやったかもしれない、車で出かけてね、とか答える。それがジョークなのか素なのかよくわからない雰囲気がある。

ヘンリーがどこまで計算して嘘の自白をしていたのかはよくわからない。このドキュメンタリーでも接した人によって印象はけっこう違っているし。

なぜ嘘の自白を重ねたのか。

ヘンリーが偽証を繰り返していた理由は、捜査官が喜ぶ答えをして、役に立つ存在でいれば死刑を免れられるし、アイスをもらったりできて自分の得になるし、なにかしらの優越感が満たせるから、という程度のものみたい。

自白する殺人数がどんどん増えていった理由は、ヘンリーの話が全米に広まっていって、警官にとっての駆け込み寺的存在になっていったから。未解決の殺人事件を抱えた警察は、とりあえずヘンリーのところにその事件を持っていけばヘンリーが俺がやったと自白してくれて、それで事件は解決して一件落着、ということになる。

捜査上の手続きも厳密に守られてないことが多くて、中には警察側から現場写真やいろんな情報を提供されてから自白するような例もあったらしい。

ヘンリーを収監していたテキサス・レンジャーズたちは鼻高々だし、ヘンリーも好きなの食べられるし自尊心も満たされるし、事件は解決するし、これがウィン=ウィンの関係っていうものなんでしょうかね。

ヘンリーがほんとに殺人を犯したと信じる人たちは、ヘンリーが犯人にしか知り得ない犯行現場に案内したとかの例をあげる。うーん、だからヘンリーがやった事件もあったのかもしれない。しかし、当てずっぽうだった可能性もある。多くの場合、警察が地図を見せちゃったりしてたようだし。

まあ、実際にヘンリーが自白どおりに犯行を行っていたとすると移動距離やら日程がありえないものになるっていう点と、ヘンリーが自白した事件で別の真犯人が見つかったってので、ヘンリーの冤罪というか嘘は間違いないものに思えます。

検事vsテキサス・レンジャーズ

途中、フィーゼル検事という人が登場する。この人は前述のルーカスの疑惑を報じた記事をきっかけに独自に調査を開始して、ルーカスの自白の信憑性を疑う結論をだした。それがテキサス・レンジャーズの逆鱗に触れた。

テキサス・レンジャーズは報復にフィーゼルを贈収賄やらの容疑で逮捕。フィーゼルは起訴され家探しされふんだりけったり。容疑の理由になったのはテキサス・レンジャーズと組んだニュースキャスターののニュース番組で、フィーゼルを非難しまくる内容だったみたい。

最終的にはフィーゼルはすべての容疑で無罪となり、復職するんだけど、このゴタゴタの影響なのか、すぐに検事職を辞職してしまい妻とも離婚してます。

その後、ルーカスの容疑について冤罪であるとしてルーカスを弁護したりするんですが、この検事の存在もドキュメンタリーの中ではけっこう面白い部分でした。1980年代は結構ふっくらしたいかにも成功して油ののった政治家っぽい感じなのに、ドキュメンタリーの中では痩せていい感じに枯れた雰囲気になっていた。

死刑の減刑と自白の撤回。

ヘンリーは自白した数百もの殺人事件のうちのひとつ、「オレンジソックス事件」で死刑判決を受けていました。その事件も自白だけに基づいてヘンリーの有罪が決まっていたのですが、事件が起きた当時ヘンリーは事件があったのとは全然ちがう州で働いていたとか、いろんな疑わしい点がたくさんでてきて、結局死刑になる直前に、当時テキサス州知事だったジョージ・W・ブッシュ大統領によって終身刑に減刑されます。

死刑判決を受けてからルーカスは自白を次々に撤回していって、実際に殺したのは母だけ、それ以外は全部やってないとか言ってるんですが、そういうのを見ても、後先を考えずにその場の雰囲気や目先の損得だけで自白させられていただけのちょっと頭の弱いやつっていう印象です。

まとめ

稀代の連続殺人鬼ヘンリー・リー・ルーカスはただの嘘つきだった!

全5話でとてもおもしろいドキュメンタリーでした。ヘンリーが犯人ということで納得していた遺族の怒りや悲しみをみても、冤罪とか適当な自白に基づく立件はだめだよねって思いました。

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この映画、怖かったのに…。「ワイルドシングス」のジョン・マクノートン監督が静かに描く理解不能な殺人鬼。
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