ドラマ「クイーン・オブ・ザ・サウス」の感想。

ネットフリックスでなんとなく観始めたクイーン・オブ・ザ・サウス、面白かったので最後まで一気見しました。

シーズン5で終了、基本は1シーズン13エピソードで、最終シーズンのみ10エピソード。打ち切りという話ですが、ちゃんと完結しています。4で視聴率が下がってきたこともありますが、一番の理由はドラマを減らすという局側の方針でではないかと言われています。

個人的には、シーズン4からはやや訴求力にかける展開だったので、かなり駆け足だったもののちゃんとシーズン5で完結してくれてよかったです。

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あらすじ

ドラマは麻薬カルテルのボスに君臨している白スーツの女が何者かに銃撃されて床に倒れるところから始まります。彼女がこのドラマの主人公テレサ・メンドーサ。撃たれた彼女が、いつかこうなることはわかっていた、とか言いながら、ここに至るまでの経緯を回想する。というお話で、彼女が以下にして今の立場に上り詰めていくかを描くピカレスク・ロマンです。

メキシコで路上の両替商をしていたテレサは売人のグエロと幸せに暮らしていましたが、ある日グレロがカルテルを裏切ったとして殺され、自分も追われる羽目になります。

で、逃げるテレサを匿ってくれたのがカルテルのボスの奥さん、カミラ。実は奥さんとボスは互いに反目していて、ボスであるエピファニオはメキシコの市長選に出るためにカルテルとしての露出を抑制していて、奥さんはカルテルを大きくしたのは自分だという自負がある。

奥さんは旦那のいないアメリカのアリゾナ州で麻薬ビジネスを取り仕切っていて、テレサはそこに連れて行かれ、奥さんのもとで強制的に働かされる。

大筋としては、そこで持ち前の能力と才覚を発揮して徐々に認められ、のし上がっていく、という話なのですが。

シーズン3まではテンポよくめちゃくちゃおもしろい

シーズン3までのお話は、大雑把に言うと壮大な夫婦喧嘩、というより夫婦戦争です。

テレサはいろんなヤバい仕事を押し付けられてそれをなんとか乗り切っていくんですが、大きくストーリーを動かすのはエピファニオとカミラの壮大ないざこざ。カミラはアメリカでのビジネスを勧めながら旦那の麻薬ビジネスを乗っ取ろうと画策し、旦那はカミラの勝手な行動を止めようと対抗する。

カミラがなにか仕掛けるとエピファニオはそれを予見していてカウンターを食らわせ、しかしカミラもさらに別の方法でエピファニオに一撃を食らわす。

お互いの陰謀、策略の連続が本当にテンポよくて飽きない。なにか企んだことの結果がすぐ分かり、対抗する行動も即座に実施される。それによって互いの力関係がめまぐるしく変化していく。

そしてまた、単純に敵対し合っているというわけではなく、長年連れ添った夫婦なので根底にはお互いに対する愛情、信頼、敬意がある。この愛憎半ばする、というかキャラと立場が強過ぎるのでちょっとしたちょっかいがすべて命のやり取りみたいになってしまう関係性がとても重白かった。

また二人には娘が一人いて、娘をめぐる攻防にも結構分量が割かれています。娘は親父の不倫を知ったり(カミラを愛しているが極普通に不倫してる)、親父はカルテルの幹部の息子と付き合う娘を心配したり。ここも二人の関係を変化させうる重要な部分でした。

で、ただアメリカとメキシコという遠いところから間接攻撃をしているだけではなく、麻薬ビジネスの状況もどんどん悪化したり変化していくので、カミラに手駒として使われているテレサはメキシコはもちろんボリビアとかいろいろな場所でいろいろなヤバい相手と渡り合っていきます。

そこに、やはりカルテルを裏切った旦那のせいでテレサと一緒に逃亡していたブレンダ母子のエピソード、グエロに託された謎のメモ帳の秘密などがからんできて、多層的に進行します。

もちろん、死んだとおもっていた恋人のグエロは実は生きているし、ちょっとストーリー的にタルくなりそうかな?という箇所をすぐに修正してきている感じがして、息をつく暇もない面白さです。

キャラクターも魅力的

イケメンのジェームズは元軍人でカミラの右腕、何でもこなせる万能選手なんだけど、寡黙でテレサに惹かれているように見えつつも仕事を優先させてなかなかロマンスに発展しない。そこに死んだはずの恋人グエロが現れて三角関係みたいになったりして、なかなか笑えます。

このジェームズ役のピーター・ガディオット、ネットフリックスの実写版「ワンピース」でシャンクスを演じてる人でした。調べなかったら気づかなかったね。

ポテも、脇役だと思っていたらいきなりレギュラーメンバー化して、後半はちょっとキャラ変わってないか?というくらいに存在が大きくなってくるキャラクターで、ドラマの人気を牽引していたのではないかと思います。

エピファニオの右腕、バットマン。こいつはかなりヤバいやつだと思っていたら、序盤であっさり殺されて更にヤバいコルテスが登場。メキシコ軍の大佐(後に将軍)でありながら市長になったエピファニオと一緒に麻薬ビジネスの片棒をかつぎます。もう、政治の腐敗とかそういうレベルじゃないですね。

ほかにもカルテル幹部のボアス・ヒメネス、密輸を手助けしてくれるジャック、ボリビアで新興宗教の教祖みたいなことをして麻薬製造をしているエル・サントなど、なかなか魅力的なキャラクターがたくさん登場します。

主人公は、どこかで見たことあると思ったら、映画「アイ・アム・レジェンド」にでてた蝶のタトゥーの入った女性でした。

シーズン4~最終話までは少し勢いが落ちる。

シーズン4以降は拠点をアトランタに移し、少しテンポが緩み、緊迫感も薄れる気がします。

今までのようなカルテルのボスとの攻防はなく、出てくる連中は少し小物感があります。シーズン4の悪役である判事はちょっとインパクト弱いし、最初にバトる連中も狭い世界を仕切っているギャングのボスって感じ。

またどっちかというと仲間割れ、自爆みたいなトラブルや危機が多くて、序盤はそこがどうなんだろうとおもったりもしたんですが、実はこのメンツを選んだのはテレサであって、組織のマネジメント、ボスとしての采配という新たな問題に対処していく話が描かれる、と考えると、まあ納得できました。

一方でテレサ自身が麻薬を常用し始めている危うさ、殺人を簡単に命令できるようになってしまう変化などは描き方が足りず、本来はこの辺をもっと掘り下げて、最終的な決断につなげていくというストーリーが用意されていたんじゃないかなと感じました。

またラスト2話くらいは、一気に話を終わらせるためにすごい展開になります。メキシコの伝説とか、決闘の伝統とか、そこで初めて聞いて笑っちゃいましたが。でもみんな死んで全滅みたいなエンディングに比べると、遥かに自分好みでいい結末でした。

まとめ

麻薬ビジネス周辺のリアリティなどは、さっぱりわからないので判断できませんが、勢いがいいので細かい矛盾点とかはあまり気になりません。CIAとかエル・サントのあたりがちょっと浮いてる感じはしますが、まあいいんじゃないでしょうか。

あと基本的に、でてくる連中はみんな犯罪者なんですが、そうした中でも仲間同士の絆や献身みたいなものに価値を置く側面を描くことで、感情移入はできるように思います。麻薬密売人とその手下たちなんだけど。

最後まで面白くみられたドラマでした。

原作はスペインの作家アルトゥーロ・ペレス・レべルテの小説で、正確にはこの原作を元に作られたスペインのテレビドラマ “La Reina del Sur” を、リメイクしたものとなります。スペインドラマ版はテレノベラと呼ばれるタイプのドラマで、長く続くものが多いみたいで、この原作ドラマも3シーズン183話+αあるようです。

ちなみにオリジナルのドラマとは多分、相当違っていて、スペイン版ドラマにはカミラもジェームズも登場しません。元になった小説も多分かなり違っているんじゃないかと思います。

アルトゥーロ・ペレス・レべルテは読んだことありませんが、映像化されている小説が結構あり、スペインの人気作家のようです。「ナインスゲート」原作もこの人だったが、これもだいぶ脚色されて映画化されているようだ。

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