「君の名は」と一緒くらいの時期に公開されてたアニメで、最初どっちがどっちかわからなかった。テーマソングがaikoだということで、生ぬるい恋愛映画じゃないかと思っていたら違った。
原作の漫画と読み比べてみたけど、どっちも面白かったと思う。
エピソードの取捨選択がうまくいってて、2時間ちょっとにうまくまとめていたのがよかった。ただ映画制作のエピソードをすべて捨てて、それはいい判断だったけど、一部の脇役の存在意義が薄れてしまった気もします。弓弦が女の子だとわかる過程がちょっと省略されてり、多少短縮されてる箇所がある。それもちょうどいい。
それ以外はかなり原作に忠実。
映画版でよかったのは音楽とか、音。あと顔にバッテン印。
気になったのは、画面の中心とかにフォーカスがあたっていて、その周囲がピンぼけ気味に描写されること。わざとなんだろうけど、かっちりピンぼけのない絵が好みなので。
この映画は聾唖者をヒロインにはしているけど、テーマはお互いの気持ちのすれ違い、コミュニケーションのずれみたいなことなんだろうと思う。
そのずれが最高潮に達するのがヒロイン硝子の自殺未遂の場面だろうけど、映画でもここが一番のクライマックスになる。なんで硝子が自殺を図るのか。これはこのキャラクターがちょっと理解し難いくらい優しい、周りに合わせ周りのために行動する性格だからだと思う。それが度を越して、ついに自分を消し去ることを選択した。
石田にしてもそう。普通の人だったら、この映画の小学校時代みたいなことがあったら地元で昔の仲間と顔を合わせることなんてできないと思います。しかし石田はいじめを後悔し、硝子に謝ろうと決心する。過去のいじめを後悔するのはだれでもできるけど、そのことを実際に謝るってのは誰にでもできることじゃない。それをできる石田もまた、普通の人とは違う。
つまりこの映画の主人公達は主人公になるだけの素質をもっているわけだ。当たり前だけど。ただのいじめっ子とただのいじめられっ子じゃ、物語にはならないからね。硝子と石田だったから、こういう形の物語になった。
しかし、もといじめっ子といじめられっ子が恋愛関係になることがあるのか。これについては、人の心は変わる、としか言いようがありません。ありえないと言う人もいますが、まあ普通はないと思う。元いじめられっ子が、自分をいじめてたやつがどツボにハマってるのをみたらざまあみろとしか思わないんじゃないか。しかし、人の心は変わるものだし、石田と硝子だからこそそういうことも起こり得た。石田と硝子の特殊性によって成り立っている部分は大きいと思います。まあ、どちらにしろ恋愛要素はこの映画ではそれほど重要ではないと思います。
ただ、この映画の宣伝を見た限りまさにそういう恋愛映画だと思ってしまったのは事実です。aikoの曲が流れてるし。いい意味で期待を裏切ってくれた良作でした。