ビヨンドを見たときも思ったけど、やっぱり初代が一番よくできている。
いろいろな趣向を凝らした殺し方、バカヤローコノヤローの応酬、大使館でのカジノ、会食シーンの絵面の良さなど第1作の良さはいろいろある。しかしいま振り返ってみると、1作目ではストーリーの起伏がはっきりしているっていうのがシリーズでは一番の特徴だった気がする。別の小さな組との揉め事がだんだん大げさになっていって、大友が指を詰める羽目になって、最後は自らの親玉である山王会という大きな組織に潰される、という流れが一つの物語としてきちんとできる。そして最後に大友が自首するという結末も、組長とは言え下部組織の長の悲哀、限界を感じさせるし、その後のオチも「その男、凶暴につき」と同じパターンで、まあきれいに決まっている。
ようするに、「アウトレイジ」は初代できれいに完結した物語だった。
その後のビヨンドは、「アウトレイジ」を薄く引き伸ばして再生産したものだなという感じ。ただし、ビヨンドはアウトレイジの直接の続編で、アウトレイジの登場人物たちのその後が描かれている分、まだ納得できた。関西の大手暴力団花菱会という新顔も、西田敏行とか目新しさがあってよかった。
ただ、物語の展開がずっと均質的で、ずっと同じテンションで進んでいっていつの間にか終わってしまう、という感じが強くした。最後は大友は死ななかったものの、キャッチコピーが「全員悪人、完結」だったし、これはこれできれいに終わっていた。
「アウトレイジ 最終章」は同じことの繰り返しで間延びした印象。
なので「アウトレイジ 最終章」はさらに物語を引き伸ばし、ビヨンドに輪をかけて展開がのっぺりした感じ。つまらないわけではないんだけど、山場とか、転機が感じられず、時間的にそろそろ終盤なのかなと思っていたら、やっぱり終わっちゃった。でも、これで終わりなの?みたいな、もやもやしたものが残る幕切れだった。せっかく西田敏行が「古臭い極道、とことん追い込んだるわ」って言ってるのに、それからとくに追い込まれる様子もないし。
全体的にパワーダウンした感じが否めない。個人的には初代>ビヨンド=最終章という評価。
いまいち乗り切れないのは、大友が主人公じゃないから。
ビヨンドから続く問題点は、大友がすでに物語の主役じゃなくなってる点。ビヨンドでは丸暴の刑事片岡にいいように利用される役で、アウトレイジというタイトルとは裏腹にすっかり毒気が抜けて、自分のしていることにも終始乗り気じゃない雰囲気が漂っていた。
「アウトレイジ 最終章」でもさらにその雰囲気が増す。韓国マフィアvs花菱会という構図における実質的な主役は西田敏行演じる西野で、大友はその対立で使われる駒。そこに駒の無情みたいなのはあるんだけど、立ち位置がはっきりしないし、最初から失うものがない状態なので、何がどうなってもそれほど感情移入できないのである。
まあラストシーンは、やっぱり唐突感は否めないものの、無常感、無力感みたいなものはよくでていたと思う。無軌道な暴走の末の終わりではなく、やることもやって、人生にも疲れて、諦念の上での終焉で、ほんとに終わっちゃったんだなという感じ。自首→刺される、という初代のほうがいいと思うけど。
しかしアウトレイジというには「怒り」が足りない気がする。このシリーズは、タイトルにふさわしく最後は派手にどかんと終わらせてほしかった。いっそのことダメ会長の失墜を目論む西田敏行+塩見三省を主人公にして、大友の行動は一切明かさないほうが面白かったかも。大友はとつぜん現れて西野の計画をことごとく妨害して何もかもめちゃくちゃにする、という理由なき殺人鬼に仕立てて、アウトレイジというタイトルにふさわしく怒りと破壊に満ちた物語にする…。
しかしつまらないというわけではなく、楽しめる映画です。
2作目以降、監督の目指した方向とわたしの考えていた方向がだいぶ違っているというのはよくわかった。ただ、だからダメとか嫌いというのではなく、相変わらず好きで、やっぱりこの映画は二転三転する組織同士の対決の行方を冷たく眺めながら、たくさんでてくる黒塗りの高級車とか、会談中の革のソファーのきしみ音とか、埋められた花菱会会長の「おい!」ではない「よう!」連呼とか、出所した幹部を祝う集会が「○○君を励ます会」だったりとかそういうネタとか細部を楽しむのがあってるみたい。
そういう意味では二度三度と見ても面白いし、相変わらず絵面は好き。車の描き方とか、おっさんたちが会話してるシーンとか、なんかいい。
結末が結末なだけにもう続編は出ないんだろうけど、本当はもう数作見てみたかった。昔の香港映画みたいに年1作ペースくらいでバンバン作ってもいいのに。しかたないので、「アウトレイジ 最終章」をみてから初代「アウトレイジ」を見て、延々とループするのがある意味理想的。
出てきた役者さんについての感想。
役者では西田敏行が一番印象的かな。死んだふりをして裏で会長失脚を目論む若頭で、準主役級の活躍でした。
あと塩見三省がよぼよぼのおじいちゃんみたいになっていてびっくりした。ケータイで電話するシーンとか、手元がおぼつかない感じで心配になった。
ピエール瀧は「凶悪」と同じく弱者に強気で目上に媚びへつらうヤクザを演じていて似合っていた。ひょっとしてチョイ役なのでは、と思ったら意外と出番があってよかった。
原田泰造は暴走族上がりの「活きのいい」若者役で、なんで原田泰造?って思うようなセリフもろくにないチョイ役だった。
丸暴の刑事役の松重豊はつねにピリピリした感じ。あと光石研が山王会のヤクザ役ででている。
余談だけど「深夜食堂」というドラマの幾つかのエピソードでは逆の役柄を演じているのが面白い。松重が昔気質の九州のヤクザで、光石研が刑事。二人は高校で同じ野球部…という馬鹿馬鹿しいような設定だけど、あのドラマはそういうのがいい。