「アフターショック」の感想。イーライ・ロス制作の悪趣味な映画。

「アフターショック」を見たので感想を書きます。

率直に言うと、下品なパニックもの。

イーライ・ロスが脚本、原案、制作に関わっていて、イーライ・ロスらしい「ホステル」みたいな映画になっている。

チリに旅行に来ていた男3人組が巨大地震にあい、その後の災難に巻き込まれるというあらすじで、大まかな構図はホステルと同じ。チリに旅行に来たグリンゴ、ガイド役のポヨとアリエルはクラブで3人組の女性と知り合う。お姉さん、妹、妹の友達を連れてクラブに行ったり楽しく旅行をしていた6人だったが、突然巨大地震がチリを襲い、むちゃくちゃな災難が6人に降りかかる。

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震災直後の混沌から生まれる恐怖。

「アフターショック」というタイトルの通り、地震そのものの被害よりもそこから派生する二次災害、人災がメインのトラブルになっています。もちろん地震でもいっぱい人が死ぬんですが、その後急斜を登るロープウェー(チリではよくあるらしい)が断線して病院に避難しようとして乗っていた人がみんな死んだり。

ただ、その後の脅威は地震で壊れた刑務所から脱走した囚人がメインになります。どうしようもなく粗暴な凶悪犯ばかりで、主人公一行に女がいるのを見つけて女目当てでひたすら追いかけてくる。

主人公たちも隠れたり反撃したりするものの結局見つかり、女性の一人はレイプされ、主人公は無残に焼き殺される。その隙に逃げ出した女性二人と途中で合流した消防士の男はなんとか協会に逃げ込み、地下通路を通って逃れようとするが…。

相変わらず人は死にまくるし、残酷に死んでいきます。とくに、主人公のイーライ・ロスの死に様は哀れ。石柱の下敷きになって瀕死でありながら、レイプされている女性を助けようと暴漢に小石を投げつける。そして、「てめ、地獄に落ちろ」と言われ上半身にガソリンをまかれ火をつけられます。さすがにこのシーンはちょっと映像がぼけてボカシがかかったようになってました。

ただ、見ていて辛いような映画かというと、そうでもない。ようは、露悪的すぎて馬鹿馬鹿しい。

脱走囚たちは卑劣そのものだし、震災も恐ろしいに違いない。日本の大地震のあとにも空き巣とか火事場泥棒が必ず発生しているし、阪神大震災の被災者には、地震後しばらく常にバットを抱いて寝てたという人もいる。

地震、津波がテーマの映画だとどうしてもそういう現実に起きた災害を想起させられたりするもんですが、この映画はそうなっていない。

取って付けたような残酷シーンが連続します。

その理由は、あまりにも過剰かつ意図的な災難の頻出で、現実味のないB級映画にしか思えないから。「ファイナル・デスティネーション」並に悪いことが起きるので、個々のエピソードは残酷でも通してみると悪趣味なパニック映画にしか思えないんですね。

そもそも、お姉さんの言いつけを守って決められた日に帰国してれば、この災難には合わずに済んだ。

掃除のおばちゃんに邪険にした人は地震で即死。親切にしたお姉さんは出口に連れて行ってもらえる。

掃除のおばちゃんはマンホールから顔を出して、車に轢かれて即死。

アリエルはバーの店員を助けて、代わりに手首を切断。

アリエルを救うためなんとか病院に向かうロープウェーに乗せるが、ロープウェーの架線が切れて乗客全員死亡。

その他にもいろいろ。消防士を助け、一緒に住宅地に逃げ込もうとするものの、一般人のふりをした脱獄囚を恐れる住民のおばちゃんに拒否され、挙げ句撃ち殺される。ここはさらに皮肉が効いていて、実は助けた消防士は実際に脱獄囚の変装で、一人はそいつに殺されてしまう。つまりおばちゃんが正しかったわけだ。

神父は梯子が折れて墜落して死んでしまうし。

最終的にお姉ちゃんvsニセ消防士の一騎打ちになり、お姉ちゃんが消防士を手斧でぶっ殺し、なんとか脱出する。下水口から出たお姉ちゃんの目に写ったのは一面に広がる砂浜と青い空。なんと、悪夢のような夜は過ぎ去り、すでに朝を迎えていたのでした…。

もちろんそこで終わるわけはなく、その後どうなるかは皆さんおわかりだと思います。

こうした出来事が、だいたいホラー/パニック映画のセオリーどおりに展開されるので、そういう意味では予定調和的であるとも言えます。つまり過激ではありますが、映画的に特に野心的なものではなく、ジャンルの中に埋没しかねない映画かもしれない。

キャスト

キャストは主人公の一人グリンゴにイーライ・ロス、女性側メインにロレンツァ・イッツォという夫婦コンビ。あとアリエル役がアリエル・レビで、この3人は「グリーン・インフェルノ」の人たちですね。ロレンツァ・イッツォは「ノック・ノック」にも出てます。そういう、身内中心のキャスティングで、チリ映画ということもあるかもしれませんが、あまり有名な人は出てないみたい。

そのなかで注目すべきはお姉ちゃん役のアンドレア・オズヴァルト。奔放な妹のお目付け役といったお硬い役なんですが、実は美人。真の主役はこの人です。

予算はずいぶん少なそうな感じですね。照明なんかも蛍光灯?みたいな感じがするし。しかし、その割には被災シーンなんかの臨場感はいい感じで、けっこう頑張っていると思います。いまwikipediaをみたところ、全編EOS 5Dで撮影したそうです。撮れるもんですね。

まとめ

2010年の実際のチリの震災をもとにこの映画を構想したらしい。

誰が助かって誰が死ぬのかもランダムに決まるので、その点は震災っぽくもある。ただ、震災よりもその後の混沌状態、というより脱獄囚がメイン。イーライ・ロスらしく表面的な過激を追求していて、底が浅くなっている印象。「グリーン・インフェルノ」は一応環境保護団体の欺瞞を皮肉ったりしてたけど、今回はそういうのないみたい。皮肉な展開というのはあるけど、それもユーモアが無いせいで露悪的な映画に思える。これに比べると「ノック・ノック」が高尚な映画に思えてきます。

趣味悪いね、と笑って見られればいいんだけど、同じくらいの時間を使ってパニック映画をみるのなら、ちょっと違うけど「ディープ・ブルー」とかを見たほうがいいかな。