貴志祐介「ミステリークロック」の感想。

貴志祐介のミステリークロック。「「鍵のかかった部屋」待望の続編」と帯にある。そんなに待ち望まれていたのか。「防犯探偵・榎本シリーズ」ともある。いつのまにかそんなシリーズになっていたのか。まあ、ドラマ化されてるくらいだし、人気あるのかな。個人的には「新世界より」の前日譚を早くまとめるか、「悪の教典」の続編を書いてほしいものですが。

ほかにも帯にはいろいろ褒める言葉がかかれてるんだけど、確かに納得できる賛辞である。

わたしがよんで思うのは、とにかくこの著者は真面目だなあということ。この本には4つの短編が入っている。そのどれもがいわゆる本格推理小説で、でたらめなところのない、緻密に計算され作り込まれたトリックが仕掛けられている。どれも読んでてなるほどねぇと思う。でも、それよりも、なんか読んでて疲れてしまうところがある。

なんというか、小説を読んでいるはずなのに数学の証明問題の解説を見ているような感じがしてしまうんです。とくに3つ目の表題作ミステリークロック。確かにずいぶん手の混んだトリックで、理論的には可能だけどこんなの実際にやるの不可能だろ、っていうよくある本格推理ものなんですが、あまりにややこしくてついていくのが大変だった。これ、できる?理屈では可能だけど、ほんとにできるの?まあ小説内では実行されているし、たぶん現実世界でも再現可能ではある。

でも、こんなのやろうとするのも思いつくのも、天才かものすごい真面目な努力家にしか無理だよ。そして、貴志祐介はものすごく真面目な秀才だという気がする。この本の短編でも、いろいろ下調べや取材をきっちりこなしているのがわかるし、その成果をきちんと取り込んで専門業界のネタを紹介してくれる面白さもある。

「青い炎」ではけっこうがんばって完全犯罪を目指してたけど、それが崩壊していくのが高校生の幼さ、また若者の青さと相まっていい感じだった。青春小説としてもよかった。

「硝子のハンマー」では、主人公が初登場ということで、まだギャグもそこそこでその性格描写がなかなかおもしろかった。そして後半に突然挿入される犯人の半生。そこがよかった。

そして、そういうサブ要素の希薄な「ミステリークロック」。なんか、つかれました。

あと文章ね。貴志祐介の小説はどんどん読みやすくなっている気がするんだけど、文章面ではこの「ミステリークロック」も無駄を排してずいぶんスッキリしている。というより、スッキリしすぎている気がする。個人的には「天使の囀り」くらいでいいんだけど。

あとギャグね。青砥弁護士の言動なんかはときどき面白いんだけど、迷推理とかちょっと無理やり笑いを入れている感じがする。硝子のハンマーの頃に比べてちょっとキャラが変わりすぎてる気が。この安易な笑いは何なんだろう。

なんというか、映像化したときにわかりやすいように書いているのかな。

ゆるやかな自殺

かるいジャブといった感じの作品。これのトリックは読んでいてなぜかわかった。

鏡の国の殺人

これも、まあついていける。なかなか大掛かりなトリックだと思いました。

ミステリークロック

大変複雑なトリックでした。図を何度も見てもいまいち理解できないのは、わたしが馬鹿だからでしょうか。登場人物に癖のある人が多くてそちらも楽しめました。とくにヒキジイこと引地三郎という老作家。

コロッサスの鉤爪

この中では一番事件の背景がしっくり来た。

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まとめ

悪の教典の続編はないんですか?